私学における拠点校としての
地位を確立しつつある
― 熊本学園大学付属中学校・高等学校の近況を教えて下さい。
本校は建学の精神「師弟同行」「自由闊達」「全学一家」を体現する学校として、堅実な歩みを積み重ねてきました。特色として第一に、中学高校とも「生徒第一主義の教育」を目指していることが挙げられます。「自分で選ぶ。自分で決める」をスローガンに、中学では目標大学への現役合格を目指す学修プログラムや、様々な取組みを通して学ぶ喜びを知り、総合的に人間力を高める体験型プログラムなどを実施。また高校では自分の適性を活かし、未来を切り拓くことのできるクラス選択制やカリキュラム編成を採用しています。そして保護者・地域からの温かなご支援ご協力により、高校は令和元年に60周年、中学は令和3年に10周年を迎えることができました。
そうした今、熊本県内外の私学における拠点校としての地位を確立しつつあると自負しています。学業においては、令和3年度大学進学者数は国公立大153名(過年度卒を含む)と、県内私学ナンバーワン。そして早慶等の難関を含む全国の私大にも、599名が合格しました。なお私大では一般入試合格者が多いことはもちろん、そうした難関大への指定校推薦枠を多数持つことも、本校の強みと言えます。また全体的に難易度の高い医歯薬系の大学に、30名が合格しています。
部活動でも同年度の県総体にて、ボートの男子ダブルスカル・男子シングルスカル・女子シングルスカルで優勝。女子テニス団体、体操男子団体・個人総合、女子跳馬、陸上男子800mでも優勝を果たしました。県総文祭でも囲碁男子個人で優勝するなど、文化部も活躍。文武両面で目覚ましい実績を重ねています。
さらに県内トップの「超進学校」を目指し、「より時代に則した特色を持つ、質の高い教育」への基盤強化を図っています。具体的には「複数担任制」から「チーム担任制」の移行(学年ごとに担任が変わり、学年全体を当該学年担当教員全てで担当する)、またICTの活用等により、協働的な学びを保障しながら1人ひとりに個別最適化した教育を提供することなど。このように学内文化・学力両面における進化に力を入れていきます。
24歳頃、名古屋大大学院時代の一枚。
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自らの好奇心・探究心を大切に
新たな自分づくりへチャレンジして ― 貴校での学生生活を通して、生徒に特に学んで欲しいことは。 まずはやはり、生徒1人ひとりがお互いに固有の存在、個性ある存在として認め合い、お互いの人権を尊重し合うことの大切さですね。また建学の精神の1つ「自由闊達」とは、人間の基本的権利「自由を大いに享受する」ということでもあります。その意味をしっかりと考え、日々の学校生活のなかで積極的、自律的に実践するよう努めて欲しい。自分が自分らしくあるためにも、自らの好奇心・探究心を大切に、新たな「自分づくり」へと様々な活動にチャレンジしていって欲しい。本校は、そのための架け橋でありたいと思っています。 |
― 学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。
高校時代になぜか教育学の月刊誌を読んだことがあり、「教育を学問として捉えること」の大切さを感じました。そのため神戸大の教育学部を志望したんですが、先生には反対されましたね。看板の経営学部だって受かるのに、なぜ教育学部なんだと(笑)。
そうして進学した大学では、ゼミの仲間と教育学関係の「読書会」を実施するようになりました。その時に初めて、授業における受動的な学びではなく、「仲間と共に自主的・主体的に学んでいくことの大切さ」を知ったんです。思えばそれまでの学びは、人との競争に勝つためにやっていた。ですが学びの本質とは、「共に学ぶことで他者と繋がり合うこと」であると実感したんですね。以来、自主的・主体的に学ぶこと、協働的に学ぶこと、この2つが私の「今に活きる、学び」の原点となっています。またそこから、保育学・教育学研究者として自分の道が始まったとも言えます。
自分に与えられた一切に
出来得る限り真摯に対峙する
― 座右の銘は。
「受取るの一手」。大学院時代の恩師で大阪教育大学名誉教授の中谷彪先生が、生涯研究の対象としている日本の教育思想家『塩尻公明』による有名な言葉です。
塩尻は「ただ一つだけ、誰にでもできることがある。それは自分に与えられた一切のものをよく受け取ること、私を去ることである」と言い、それゆえに、「私たちは今ただちに、良く受け取る人間、私を去る人間でなければならない」と説きます。ですから大学教授を兼ねての本校校長就任を打診された時も、私はすぐに引き受けました。これも自分に与えられた使命かもしれない、ならばそれを良く受け取り、出来得る限り真摯に対峙しようと。
とはいえ、この言葉の深い意味を十分に理解し、実践しているとはまだまだ言えません。だからこそ、少しでもそれができる人間になっていきたいと思っています。
― 若者へメッセージをお願いします。
1つは、自分だけのオリジナルな世界を創っていって欲しいということ。研究者として日々奮闘している私自身、とても大切にしていることです。まだ誰も取り組んだことのない分野・領域・テーマにチャレンジし、自分ならではの新しい世界を生み出していくということですね。
そして同時に、他者(保護者、家族、友人、アルバイト先の従業員、近所の人たち、ボランティア仲間など)と繋がりながら、新たな社会の担い手になっていって欲しいということ。先に協働的な学びが大事と述べたように、別にオンラインだっていいから、とにかく他者と繋がってこそ私たちは、本当に重要なことを学べる、実現できるのだと実感してきましたから。
以上の2つを大切に、若者にはこの激動する世界情勢の中で、民主的かつ平和的な国家・社会の構成者となってくれることを願っています。
(インタビュー/2021年12月16日取材)