チャレンジを止めず
限界の先の自分に出会え 全国で準優勝、悔しいが 成長への幕開けと感じている ―大津高校サッカー部の近況を教えて下さい。 山城 昨年12月からの選手権全国大会に出場した際は、最中より多くの方から応援のメッセージを頂きました。そして決勝に臨むことができましたが、その内容、結果には悔しさばかりです。熊本県勢では過去最高の戦績と話題にはなったものの、それで満足しては絶対にいけないと思っていますし、あの場にいた部員全員が誰1人満足していません。頂点に近づいたことでこれまで積み上げてきたことを評価できる一方、力が及ばなかった現実をしっかり認識し、悔しさをバネにもっともっと成長しなくてはと思っています。これは選手だけでなくもちろん、私自身にも言えることですね。 幸い、春から3年生となるメンバーのうち2名はスタメンとして全国の舞台を経験し、決勝にも出場しました。その1人が新チームのキャプテンでもあります。そのため私が鼓舞するまでもなく、彼らを中心に成長へのモチベーションが、チーム全体に自然と育っているのを感じます。そういう意味でもここからが大津高校の、新たなストーリーへの幕開けだと感じています。 |
大津高校サッカー部3年生の頃。
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まずは自信を持ってもらう
そして苦手の克服にもつなげる ―今後、力を入れていきたいことは。 山城 総監督の平岡がよく言うことですが、「1人ひとりのストロングポイント(長所)」を徹底的に引き出し、伸ばしていくこと。その上で、徐々に苦手も克服してもらう。特に今は世界中の凄いプレーをスマホで簡単に観れる時代です。すぐに答えを探してしまい、自分から人に聞いたり自分で考えたりということが足りていないように感じます。また変に醒めているというか、劣等感を持つ子が多いんですね。だからこそ「出来ないこと」ではなく、まずは「出来ること」に目を向けるよう努めています。 さらに前述のスマホに代表されるテクノロジーなども、便利な面は積極的に活用していきたいですね。すでに実施しているものだと、かつては選手が各自のノートに手書きしていた「練習の振り返り」も、今はアプリで記録。そうすると私たちからのフィードバックも容易ですし、さらに1人へのフィードバックをみんなで共有できたりと、いろんな活用が可能になります。そのように良き伝統は受け継ぎながら、新しいものも柔軟に取り入れていく。そして自分たちだけでなく熊本全体、もっと言えば九州全体における「サッカーレベルの向上」を担う、そんな存在となることを目指しています。 |
最後に頼れるのは自分自身
―部での活動を通して、生徒に学んで欲しいことは。
山城
一番は「自分で自分の課題を見つけ、解決できる力」を身につけてくれること。当部は50人超のJリーガーを輩出してきた全国有数と言える実績があり、現部員にもプロ志望者が少なくありません。ですがたとえプロサッカー選手になれたとしても、「『自分』引く『サッカー』が『0』ではいけない」と平岡総監督が常々言っています。大津高校=人間教育と言われますが、私たちは選手として以上に、いち人間として社会をリードできる人間に成長して欲しいと思っていますから。
試合中のフィールドでは、私たちは選手を手助けしたり一度止めてやり直すことができない。同じように、社会に出たら最後は自分を頼りに生きていくしかない。そうした自立心を養う意味もあって、当部は正規の練習時間が短く、自主練が非常に長いという特長があります。結果、試合に出たければ自分で頑張るしかないわけです。
また大切なのは、「自立しているからこそ、仲間を助けることができる」ということ。みんなが助け合うより良い社会をつくるためにも、自立心の育成は欠かせないと思っています。
壁に突き当たっても
それは前に進んでいる証拠
―座右の銘は。
山城
これも平岡総監督に教わった言葉ですが(笑)、「人生、我以外皆我師」。自分以外の人からは誰であれ、学ぶべきことが多々あるという意味で、そのために「謙虚」に人と向き合うことが大切ということですね。
これは、試合の相手でも同じこと。選手権大会の後、熊本ではライバルに当たる監督の方から、「熊本から結果を出してくれてありがとう」と言葉をかけていただきました。そのチームは私たちに負けて全国に行けなかったわけですから、なかなか言えないことですよね。その時も自分とは違う視点、違う立場からならではの大きな学びを得たと感じました。
―若者へメッセージをお願いします。
山城
平岡総監督から私にいつも言っていただいていた言葉を、そのままメッセージとして伝えます。それは「チャレンジすることを止めないで欲しい」ということ。チャレンジして壁に突き当たったとしても、それは前に進んでいる証拠。そして諦めない限り壁の向こうにいる自分、限界の先にいる自分に出会うことができるはずです。
私の例で言えば大学院に進む際、4年間在籍していた大学サッカー部の監督を学生監督として務めることになりました。監督が不在となり後任がいないことから、まさにチャレンジという思いで引き受けたのがきっかけです。しかし指導経験が全くない、また年齢もほぼ同じ大学生が相手ですから、上手くいかないことも多々ありました。今でもそうですね、平岡総監督とのご縁により母校サッカー部の指導者となりましたが、これも自分には大きなチャレンジ。そしてやはり、総監督に比べ自分はまだまだなどと、壁を感じることもよくあります。
でも、だからこそ学べたこともたくさんある。ですから皆さんも臆することなく、やりたいことならチャレンジを続けて欲しい。そして「限界の先にいる自分と、しっかりコミュニケーションを取りながら」頑張り、壁を越えた自分に出会って欲しい。私も平岡総監督を日本一にできるように、そして総監督を超えられるようにチャレンジを続けていきます。