進行する少子高齢社会の中で、保健・医療・福祉の分野での優れた担い手を育成することを建学の理念として掲げています。そうした実績のおかげで、今年も募集定員330名を上回る入学者を迎えることができました。
看護学科、社会福祉学科、リハビリテーション学科は少子高齢社会の中、社会的要請も高く、毎年多くの求人依頼を受けています。鍼灸スポーツ学科も東洋医学への関心の高まりやスポーツトレーナーを目指す人が増えていることから注目されており、また口腔保健学科は高齢者の口腔衛生意識の高まりを受けて、今後は大卒者の求人増が期待できます。
本学はこれからも熊本県北部地域唯一の高等教育機関として、医療や福祉に関する地域内の問題や生涯学習・国際交流の問題につきましても、本学の持つ人的・知的・物的資源を地域に還元し、社会貢献の役割を高めるべく引き続き地道に努力を続けて参ります。
高度医療・先進医療を
県北でも受けられるように
― 今後、力を入れていきたいことは。
森 現『公立玉名中央病院』と『玉名地域保健医療センター』が統合され、2021年3月の開院を目指して今、新玉名駅近くに『くまもと県北病院』という大病院が建設中です。高度な医療技術者を必要とする新病院と、保健・医療・福祉分野に、高い知見を持つ専門職業人を育成・輩出している本学。その2つが緊密に連携することにより、県北部地域における医療体制の充実を図ろうと動き始めています。
また玉名市は、本学と新病院、温泉とを合わせて「高齢者も住みよいまちづくり」を目指しており、近くリニューアルする『荒尾市民病院』と共に、「超高齢化を迎える県北地域振興の起爆剤」になるのでは、という期待もあります。本学としてもその期待に応えるべく、地域医療や福祉における研究と教育に、さらに力を入れていかねばなりません。そしてこれまで、熊本市に集中しがちだった高度医療・先進医療を、県北でも多くの方が受けられるようになる、そんな未来の一翼を担いたいと思います。
専門的な知識はもちろん
教養力、人間力も
身につけて欲しい
― 貴学での生活を通して、学生に身につけて欲しいことは。
森 社会人として、本当の意味で「強い専門職業人」となれる力、それを養って欲しいと思います。本学の学生は、ほとんどが国家資格取得を目指しています。ですから、そのために必要な専門的知識やスキルを学んで欲しいのは言うまでもありません。ですが卒業して、実際に就職先に喜ばれるような人材となるには、教養力、人間力も必要とされます。 そのため本学では「学科それぞれの専門性に加え、幅広い知識を身につけることができるシステム」を用意しています。高校までに学んだことの学び直しができる、加えて学んだことがない分野でも、興味があれば学ぶことのできるシステムですね。また専門分野においてもより高度な力が求められていくことを踏まえ、保健・医療・福祉の専門的知識を包括的に学び、より高い水準の実力を養うことが出来るようになっています。おかげで本学の卒業生は、同じ資格取得者でもひと味違うと、就職先から高い評価を頂いております。
ですから学生諸君には本学のそうした特長を存分に活用していただき、積極的に学んで自らを高める努力を続けて欲しいと思います。
熊本高校3年時、夏の日の一枚。左が森理事長。
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― 学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。
森 中学時代は少し成績が良かったため、慢心があったのでしょうね。熊本高校に入学した最初の実力テストでは、特に英語と数学が話にならない点数で、担任の先生からも「皆についていけないぞ」と言われる始末。大変なショックを受けました。 ですが担任の先生はご自宅まで呼んでくださり、おかげで4月から夏休みの終わりまで、それこそ死にもの狂いで勉強することができました。そして2学期になってやっと、人並みの成績を修めることができるように。「慢心は敵、努力こそが身を助く」ということを思い知らされました。 また高校時代には夏目漱石にのめり込んだことを覚えています。特に『草枕』に出会い、文章の流れの美しさ、表現の豊かさに魅せられました。これが読書グセをつけ文章を書くことに興味を持つようになり、今までの私の人生にかなり役立ったように思います。 |
真実一路に邁進して欲しい
― 座右の銘は。
森 「誠実に生きる」、これは父の教えでもあります。
私は長いこと銀行員だったのですが、その生活の中でひたすら守り実行してきたのは、お客様に対して、また上司・同僚・部下に対しても「誠実に接する」ということでした。そしてある時、田辺聖子さんの本の中に「疑わずに真実一路に邁進することこそ、悠久の大義に生きる道である」という文を目にして、この言葉がそれまでの私の生き方に確信を持たせてくれました。
社会人として、また会社人間として、たとえ社会的地位や役職が上がっても威張らない「普通の人」でありたい、そして「ありのままに誠実に生きる」ということを今も心に留めています。
― 若者へメッセージをお願いします。
森 昨今のコロナ禍により困窮した学生に対して、国や自治体が助成を行う動きの中、各大学でも救済策が講じられています。また民間でも、私が関与している『内村チカ育英財団』などは、困窮しながらも勉学に熱心に勤しむ大学生・高校生に対して、返還の必要がない奨学金を給付しています。ですから経済的に困っていたとしても諦めず、様々な支援策を活用しながら己の進む道をまっすぐに歩き続けて欲しいと思います。 最後に、「コンプライアンスの遵守」を申し上げたいと思います。社会が複雑化し混迷の度を増していますが、それだけに1人ひとりが法令や規則を守ることの重要性を、再認識して行動することが必要です。社会常識的に考えて「やって |