T1 park 記者
創立90周年を迎えた近況は。 林田 あくまでも90周年は、次の100周年に向けた一つのプロセス・取り組みだと考えています。90周年事業としては、学校の入口横にあるバス停周辺の整備リニューアルを実施しました。これは、地域の人達にも利用して頂き、地域の人達に愛される学校であるためにも整備しました。学校は地域によって支え、育てられてきました。これまで続けてくることができた感謝の思いが込められています。 もう一つは、教育ということで、幼稚園が「認定こども園」になりました。そのため0-1歳の保育環境を整えるために施設を増築しました。そしてもう一つは、中学校・高校の施設において、礼拝堂(チャペル)内にある老朽化したパイプオルガンの入れ替え事業を進めているところです。新しいパイプオルガンは、日本福音ルーテル教会を通じて宮﨑のルーテル教会にあったパイプオルガンを譲り受けて設置する予定です。今のパイプオルガンは1958年に設置されましたので、1959年生まれの私よりも一つ年上の57歳のお姉さんです(笑)。90周年の事業としては大きくこの3つが挙げられます。 |
T1 park 記者 今後の展望、100周年への想いは。 林田 創立100周年に向けて大切なことは、やはり今の流れの中に「継承・発展」だと思います。社会と時代は常に変化しています。しかし、絶対変えてはならない「建学の精神」を根幹として継承しながら、社会と時代のニーズに合った教育に取り組んでいなかければならないと思っています。そして、これから10年後、20年後の社会がどうなっているかはわかりません。今の小学生が就職する頃には半分以上の職業が変わってしまっているかもしれません。生徒達には、たくましく生き抜く人間力を身に付けて欲しいですね。いつの時代においてもたくましく生きる力は必要なことだと思います。今の子供達は次の時代を生きていく人達ですから、そのための教育を追求していきたいと思います。 そのためにも長期的な視点の中で、今何をするかを真剣に考えなければならないと思います。まずは、現場の先生方の声を大切に生かしながら、「ミドルアップダウン」とでも言いますか、つまり中間層からのアップ・ダウンを大切に教育に取り組んでいます。私学ですので、経営という視点も重要ですが、教育現場の運営が誠実で上手くいっていれば、経営はおのずと追い付いてくると思います。 |
T1 park 記者 教育において大切だと思うことは。 林田 教育というのは人の心に直接的に携わっていくことです。教育の考え方ややり方は、前向きな意味で多少遅れていても良いと思います。勿論、生徒達が習うことは最新の内容を教えていかなければなりませんが、例えば、無駄があったり、疑問があったり、つまり、教育の中において時代の最先端を行く部分と時代遅れの部分の両方が混在していても良いのではないかと思います。 例えば、学校で生徒が行う掃除も外部の事業者に頼んだり、掃除機を使用したりし効率的にやっても良いのですが、今でも雑巾がけを続けていることには大切な意味があります。利便性や自由さだけを求めていく教育では、我慢強さや忍耐力を身に付けることができず、一歩間違えば誤った方向に導くこともあり得ます。不便さや不自由さが人を育てる上で大切なこともあると言いたいのです。 子供達の「なんで?」に対して、理屈では説明できない理由のない答えが存在していても良いと思います。理を考えて説明することも確かに大切ですが、時には説明がないこともあります。それを知っておくことに意味があると思います。
T1 park 記者
ルーテル中学・高校の建学の精神に「感恩奉仕」がありますね。 林田 この言葉をわかりやすく言えば「神様の愛と恵みに感謝して、神と人とに奉仕する者となる」ということです。もっとわかりやすく解釈するならば、それぞれの人が、それぞれの置かれた立場で、〝良き働きのできる人となる〟という想いと希望が込められています。これは、勝ち組とか負け組とか最近よく言われますが、勝ち負けや比較の問題ではなく、何事にも感謝の気持ちを持って取り組み、喜ばれる人となるということです。
T1 park 記者
校長先生が若い時に経験されたことで、今の自分に役立っていると思われることは。 林田 私は天草の御所浦生まれで、子供の頃は自然の中でのびのびと育ちました。山間に囲まれた漁村でしたので船に乗り釣りに行ったり、メジロ獲り、山芋掘り、山桃摘み、四季折々の遊びに行ったりしていました。遊びが生活に密着していたように思います。 私は器用でもなく、できる方でもやれる方でもなかったのですが、何事も諦めない、しつこさだけはあったと思います。ゆっくりとした時間の中で育ったからでしょうかね(笑)。学生時代は先生や先輩からよく怒られていました。しかし、それでしょげるようなことはありませんでした。今思うと自分の思うようには決してならない自然を前に生活していた子供の頃の経験があったからだと思います。船で釣りに出掛けようと思っていても海が荒れて行けなかったり、行っても釣れなかったり、自然の流れに身を委ねながら自分ができることを精一杯やる、そんな姿勢が子供の頃に培われたかもしれません。そこで出会った経験やそこから培った考え方のお陰でしょうか、これまで周囲からは打たれ強い人間だとよく言われてきました。これも自然の恵み、神様の恵みですかね? |
T1 park 記者
若者への応援メッセージを。 林田 失敗を恐れず、失敗から学ぶということが大切です。失敗を恐れていては何もできません。教育においても転ばない方法ばかり教えるのではなく、転んでから起き上がる方法を教えることが大切だと思います。成功者は成功事例よりも失敗事例を多く持っているものです。ですから若い人にはまず、失敗から学んで欲しい、大きな勇気よりも小さな勇気を数多く経験してもらいたい。安全に危険がないということが本当の優しさではありません。見守り、勇気を持って一歩二歩踏み出させてくれる、そんな温かみや優しさを愛情として感じ取って下さい。 習慣化されたことを反復的に行動あるいは思考することは生活を送るうえでは大切なことです。当然、その過程での成長も大いにあります。さらなる成長を望むとき、「新たなことに挑み、自分の中の未知なる部分を開拓していく」ということも大切です。〝挑み、学べ!〟挑んで失敗から学び、再び忍耐強く挑んで下さい。また、挑んで成功しても、おごらず誠実さと謙遜を学んでもらいたい。〝そして、成長せよ!〟見守られる中で成長していることに感謝して欲しい。「挑み、学べ!そして、成長せよ!」不安の中にありながらも、何事にも忍耐強く、成長のチャンスと捉え、感謝を持って挑んで欲しいと願います。 T1 park 記者 ありがとうございました。 ←くまもと経済2015年 5月号にも 林田 博文校長の記事が掲載されています。 Writer.E.imamura |