T1 park 記者
尚絅大学、尚絅学園の近況を。 森 大学、短期大学、高校、中学、幼稚園の5つの設置校を擁する尚絅学園として、現在、建学の精神を再確認し、全体を統一する教育理念と目標を整理しているところです。特に新しいことを決めるわけではありませんが、建学の精神のもと、「尚絅らしさ」を柱とした教育プログラムを導入していきたいと考えています。今後も時代にマッチした新しいカリキュラムの検討に積極的に取り組んでいきたいと思っています。 新しい動きとしては、今年4月から本学の「楡木キャンパス」を「武蔵ヶ丘キャンパス」という名称に変更します。また、同キャンパス内に位置する附属幼稚園を「幼保連携型認定こども園」として幼稚園と保育園両方の機能を持たせ、新たに開園します。これに伴い、園舎も増築しました。 T1 park 記者 その建学の精神とは。 森 建学の精神は、創設の由来に関係しています。本校は、明治21年に当時済々黌黌長だった佐々友房先生とその同志の方々が女子教育の必要性と重要性を唱え、済々黌附属女学校として創設されたのが始まりです。創設に際して作られた「済々黌附属女学校創立の主旨」には、新時代への知識と淑徳を兼ね備えた女性の育成を説いた「智徳並進」(ちとくへいしん)の教えが込められています。この想いは、初代校長の内藤儀十郎先生をはじめ127年を経た今日までも脈々と引き継がれています。九州でも先駆け的な女学校として創立されました。 ちょうど今、この建学の精神の要でもある「智徳並進」を根本に据え、更に具体的な理念と教育目標の整理に学園全体で取り組んでいるところです。 T1 park 記者 大学生活を通じて学生に身に付けて欲しい力は。 森 そうですね。校名でもある「尚絅」という言葉に含まれているように感じます。この二文字「尚絅」は「衣錦尚絅」(錦を衣て絅を尚ふ/にしきをきてけいをくわう)という中国古典「中庸」の一節に由来します。この一節には、内側には錦のように豪華できらびやかな衣を着ていても、それをひけらかさずに、謙虚に振る舞って、薄い衣を羽織るという教えが込められています。つまり、うわべを飾らずに内面の充実を図ることの大切さを表しています。 学生の皆さんには、この理念に基づき、常に自己の成長を目指し、生涯に渡り研鑚を積んで欲しいと願っています。卒業してそれで終わりではなく、また、資格・免許を取得したからといって終わりでもありません。その道で仕事をしていくためには常に新しい知識、新しい技術を身に付けていかなければなりません。学生時代というのは言ってみれば、その基礎を構築する場所だと思います。ですから、学生の皆さんには、学ぶことに対して常に主体的であってもらいたいと思います。この「尚絅」の理念を身に付け、卒業後も研鑚し続けていって欲しいですね。 T1 park 記者 卒業生も専門性を養い各所で活躍されていますね。 森 文化言語学科を除いては、栄養士、管理栄養士、保育士というように極めて生活に密着した職業分野に役立つ学科を多く擁していますので、女性の持つ強みを生かせる領域というのが、本学の特色、強みそのものだと思います。例えば、管理栄養士などの免許・資格を生かした食物系の就職に強く、県内で多くの卒業生がそれぞれの職場で活躍しています。在学生の皆さんが実習に行ったりすると卒業生の方々が各所で活躍されていますので、そういった姿を見てやはり勇気付けられているようです。 T1 park 記者 学長が学生時代に経験されたことで、役に立った思い出は。 森 私自身は、割合おとなしい子供だったと思います。昔から本を読むことが何よりも好きで、高校の頃はよく小説を読んでいました。それから大学に入って、ただ単に好きな本を読むだけではなく、自分の専門周辺の書物をできるだけ多く読むように心掛けていたように思います。その周辺の資料を読むということが、専門の勉強をするようになった時に必ず役に立つということを実感しました。好きなことでしたので、「苦労した」という思いはありませんでした。それから、「広く読む」ということが「深く読む」へつながるのだと今思いますね。若い頃は、自由な時間があります。働き始めると生活時間に縛られますので、やはり学生時代にしっかり読んでもらいたいと思います。徹夜で本を読んでも次の日は何とかなるものです。若い頃でなければ出会うことのできない本も数多くありましたし、専門の勉強をするようになれば、より効率的に必要な本を読むことにはなりますが、人文社会科学の書物から芋づる式に読んでいき、読書の範囲が広がっていきましたね。 またもう一つは、当時の学生はよく本を読んでいたと思います。そして学生同士で若いなりに色々な議論するわけですが、そういった中で本を読んでいる者の強みをはっきりと感じることができました。ですから私も負けたくない、遅れをとりたくないという気持ちがどこかに根強くあったのだと思いますね。また、広く読んでいたお陰で、後に仕事や生活において何であれ文章を書く上で苦労しなかったと思います。 T1 park 記者 運動は何かされていましたか。 森 大学ではアーチェリーをやっていました。誰もが初心者として始められる点や、走るのが得意な方ではありませんでしたので、体力に応じてできるスポーツという理由で選びました。力も必要ですが、それよりも精神的な部分で強さが求められるスポーツだと思いました。精神的にどこか不安定だと直ぐに点数に反映されますし、そういった面が好きでしたね。3年間ほど続けていましたが、大学紛争が始まって続けるのが難しくなってしまいました。 T1 park 記者 学長の座右の銘は。 森 「焦らない、腐らない」という言葉でしょうか。この言葉は自分への戒めでもあります。学長や管理職の仕事をやっていますと、自分の思うようにはいかないことが出てきます。そんな時に焦ってやってしまうと、逆に混乱して、もつれてしまって上手くいかなくなってしまいます。今の時代に少々のんびりしすぎているかなと思う時もありますが、実は私自身が早く決めなければ、早く結果を出さなければ、とせっかちなところがありまして、常に自分に言い聞かせているところもあります。そして、それでも上手くいかないこともありますので、そんな時でも腐らないようにして、「よし、もう一遍やってみよう」と挑戦することが大事だと思います。 T1 park 記者 若者への応援メッセージを。 森 「一歩前へ」と若者に言いたいと思います。九州の学生は概してやや遠慮がちに振る舞うタイプが多いように感じます。また九州でも福岡の学生に比べて、熊本の学生は一歩引きがちのところがあるように感じます。私自身もそうでした。ですから、「一歩前へ」と言いたくなります。一歩前へ進めば、その後から二歩、三歩とついてきます。ですからその一歩を踏み出すことが大事になってくると思います。これは自信を持って欲しいということでもあります。地方大学だと枠をはめるのではなく、東京や大阪など都会の学生と並んでも決して遜色はないので、臆することなく、一歩前へ進んで下さい。 T1 park 記者 ありがとうございました。 |
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12月 2024
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