T1 park 記者
今後の展望としては。 福田 やはり最近特に必要だと感じていることは、医学的な問題以外に精神的なサポートが妊婦さんにとって大切だと思います。色々な精神的疾患を抱えた妊婦さんも増えていまして、こうした妊婦さんを助けるため臨床心理士が相談にのってお手伝いしています。もう一つ増えているのは、社会的な問題を抱えている妊婦さんです。この数も増えていまして、当院では地域連携室という部署を設けて、ソーシャルワーカーが相談に応じています。 お産というのは、決して怪我や病気と同じではありません。女性の人生にとって大切な1ページです。だからその1ページには、身体の問題だけでなく、精神的な問題や社会的な問題を抱えている人もいます。特に今は、核家族化が進み、商店街等の地域も崩壊していて、子育てに地域や社会の支援が受けられなくなっています。昔はおじいちゃんやおばあちゃん、家族やご近所の方々の手助けがありました。社会的な問題を抱えた人達も丸裸で社会に放り出されるような状態にあるといえます。そこで、社会的に問題を抱えた人達を支える機能が病院にも一部求められています。地域連携室が良い相談相手としての役割を担っています。 |
聖書の中に、100匹の羊のうち1匹が迷ったところ、牧者であったイエス・キリストは、99匹を放っておいて、その迷った1匹を助けに行くという話があります。これまでは医学的な問題を抱えた人を助けて幸せにすることが医療の役割であり、正常な99匹は放っておこうというのが昔の考えでした。今はその正常と思っていた残りの99匹の中にも助けが必要だということが分かってきました。つまり、身体的には健康でも精神的・社会的に問題を抱えた妊婦さんを助けることが病院の機能として必要になってきています。より多くの人を幸せにしてあげたいという想いが大切だということです。
T1 park 記者
福田理事長が仕事をする上で大切にしていることは。 福田 基本的には、多くの人を幸せにするかどうかが第1のポイントです。そしてそれが実現できるかどうかですが、目安の一つは「コンセプト」、一つは「人」、一つは「お金」、この3つが揃っていることが仕事において大切であり、そのうち少なくとも2つ揃っていなければ実現は不可能です。中でも、コンセプトのひらめいた時が一番です。ひらめきにはわくわくするものです。次にポテンシャルを持っている人を配置できるか、予算内で実現できるだろうか、といった現実的なことを考えることが大切です。 思いに残る最初の取り組みの一つは、食事の際の食器でした。当時はメラミンやアルミの食器がほとんどの病院で使われていましたが、それを全部陶器の食器に替えたことから始めました。今思えば小さなことでしたが、病院給食改革の小さな一歩であり、それが患者さん専用のレストランにつながり、フランス料理のワゴンサービスへと続いていきました。 |
T1 park 記者
九州学院時代にキリスト教からの学びもありましたか。 福田 九州学院中学校時代にはキリスト教について学んだり、学校のYMCAである白羊会に入り、高校時代では同じく敬愛会に入りました。高校3年生になって、私が会長を務め、副会長を松隈貞雄君と長岡立一郎君が務めました。その後、二人は牧師になり大活躍され、長岡君は現在九州学院の理事長を務めています。 今思えば、こうした中学・高校時代にキリスト教に触れる機会があり、良かったと感じたことは、人間にとって「Something Great」な存在があるということを知りえたことです。 医学の大きな目的は、病気を治療し、人間の寿命を延ばすことです。そして生命はお金より大切だとも言いますが、寿命を延ばす努力は見方を変えればバベルの塔を建てる営みに似ています。人間にとってお金よりもさらに生命よりも大切なものがあるということを知ることが大切です。 |
T1 park 記者
若い頃にやっておくべきこと、ためになることは何だと思いますか。 福田 多くの人がことあるごとに、ストレスがたまると言いますね。昔はこれを苦労と言ったのではないでしょうか。ストレスはゴミのように嫌われますが、昔は若い時の苦労は買ってでもせよと言ったものです。夢を持ってそれを実現しようとすれば苦労は、(ストレス)はたまるものです。この苦労は後々、大きな宝となるはずです。 最近、若者が毎年温泉に行ってゆったりだとか、ハワイに行ってのんびりするなんて言いますが、これは若い頃にすることではないですよ(笑)。やはりもっとやりたいことを明確にして、まだ行ったことのない場所に行ったり、バックパックで旅をするなど挑戦してみないといけないと思います。若い時の苦労は買ってでもしろと言いますよね。今の若者は昔ほど経済的にはあくせくしなくて済む時代になってきていますから、お金のためにあくせくしないで、もっと他のことで是非あくせくしてもらいたいと思います。何かを達成しようと思えば、苦労、失敗、挫折はあります。こうした苦労は必ず将来の自分に生きてきますからね。 |