九州ナンバーワン
‐シアーズホームグループHDの近況を教えて下さい。
丸本 弊社グループの中核企業である『シアーズホーム』は、熊本・福岡・佐賀における「新築戸建ての住宅販売」を事業の柱としています。少子高齢化で縮小しているはずの業界ですが、弊社はまず2017年4月期、売上100億円の大台を突破。そして2020年4月期は193億円を売り上げ、今期は200億円を超える予定です。年間着工棟数も1000棟に迫っており、地場の住宅企業としては熊本のみならず、九州ナンバーワンの数字だと思います。
ですが現状に甘んじることなく、中期計画として3年後には売上300億円、その数年後には500億円を目標としています。さらに長期計画として、ゆくゆくは1000億円の達成も睨んでいます。おかげさまで弊社はコロナ禍においても、2割近くの業績アップを果たすことができたので、果たせない計画ではないと思っています。
社員にも幸せになってもらう
‐今後、力を入れていきたいことは。
丸本 そうした中長期計画を達成するために必要なのはやはり人、特に若い人材が増えないと成長が止まってしまいますよね。そして良い人材を得るにはやっぱりまずは会社の利益を増やすこと、待遇を良くして魅力を感じてもらえないと、話にならない。
そのために、有効と思えることには積極的に投資していきます。これまでも最新のデジタル技術を取り入れ優秀なSEスタッフを確保することにより、マーケティングおよび営業方法を強化させてきました。また、くつろげるカフェ、安くて栄養バランスの良い社員食堂を備えたオフィスを構え、健康的に活き活きと働ける環境も整えてきました。
そして、社員に利益を還元し、「夢」と「希望」を与えること。会社の本義はお客様を幸せにして、社員にも幸せになってもらうことだと思ってます、社長だけじゃダメ(笑)。だから今年の1人あたりの給与は昨年比6%、ボーナスは7%UP。労働時間短縮や有給休暇取得も推進しており、年間休日も増やす予定です。
また弊社では「何年頑張ってこういう立場になったら、こんなイメージの暮らしが実現できるよ」というのを明確にしているんです。そうするとみんな、自分のキャリアプランを描けてきちんとした目標を持てるから、そのために頑張ることができる。おかげでこの採用難の中、年に約50名を採用。現在社員450名となりましたが、今後も近いペースで増やしていくつもりです。
負けん気が今に活きている
‐熊本の現在と未来について思うことは。
丸本 熊本だけじゃありませんが、今後も間違いなく人口が減少していくわけでしょう。私たちにしても他の業界にしても、同じことをやっていたら市場はどんどん縮小し、地域経済はダメになっていくだけ。それに対して、地域がどう対処するか。それが本当に大きな課題になってきたと思いますね。
私の考えでは、まず「地場の経営者が‟がまだす”こと」、これに尽きると思います。具体的には新しい技術に目を向け、サービスの革新を常に目指し続けること。
それによってスタッフ1人ひとりの生産性を上げ、売上を増やし、社員に還元することで魅力ある企業となり、雇用を増やす。それによって地域に住む人、来る人を増やす、そうすれば市場もまた大きくなる。現状維持とか、時代に身を任せるとかじゃなくて、私のような地元の経営者が本気でそう考え、実行することが大切だと思っています。
次に、「魅力あるまちづくり」。その地域に魅力があれば人が来る、そして経済が活性化し地域も賑わう。ただ、これも県や市だけに任せていてはダメですよね。私は熊本市中心街の活性化を目的とした会社の代表も務めているんですが、やっぱり地場の、民間のリーダーたちがもっともっと危機感を持って力を合わせ、徹底的にやらなきゃいかん問題だと思ってますよ。
丸本 学生時代というと、やっぱり済々黌高校での3年間、とにかく野球ばかりやっていたことを思い出しますね。昼はグラウンドを整備して、午後の授業は寝て(笑)、夕方から夜遅くまで練習。さすがに少しは勉強しますが、その後素振りしてから眠りにつく、そんな毎日を送っていました。
それで2年の時は県大会の決勝まで行ったんですが、3年の時は1回戦で負けてしまいましてね。その時の悔しさ、「ちくしょう」という気持ち、今もトラウマとして残ってますよ。だけどその後、大学で始めた少林寺拳法では3年の時、日本チャンピオンに。また会社員から独立してシアーズホームの前身となる会社を立ち上げた時は、銀行に相手にされなかったりと色々辛酸も舐めましたが、これも「負けてたまるか」という気持ちで乗り越えてきました。そんなプロセスを経る上で、野球部時代に培った体力、負けん気の強さというのは、振り返ってみるとかなり役立ってきたものだな、と思います。(写真は濟々黌高校3年生の頃。右側が丸本社長。)
ただそれだけで価値がある
‐座右の銘は。
丸本 「人生すなわち努力、努力すなわち幸福」。ラクして儲かる、ラクして幸せになれるなんて、絶対にありえないということです。
だから私も社会人になってからは、昔は嫌いだった勉強もやるようになりましたよ。例えば目の前の課題にヒントを与えてくれるような本はヒマさえあれば読んできましたし、それは今も変わりません。日々勉強、そしてそうやって努力をしていることそのものが幸福であるということ、そうした過程に幸福を見出すことが大切であるということ。経験を重ねるごとに実感しています。
‐若者へメッセージをお願いします。
丸本 大学で講演をした時に、「自分の生活は今後、今より良くなると思う?」と聞いたことがあるんです。ところが9割の学生は手を挙げない。今の若者は希望を持てない、夢を持てないのかなと思いましたね。
でも、そんな若者に私はこう言うんです。松下幸之助(『松下電器(現パナソニック)』創業者。「経営の神様」と呼ばれた)は「もし若者に戻れるなら、2450億の資産もいらない」と言ったと。それぐらい若さというのは、ただそれだけで価値がある、ということです。だからその価値を無駄にせず、夢や目標をしっかり持って、それに向かって努力して欲しいですね。そしたら必ず今より「人間力」が向上していく。すると自分だけじゃなく、他人を助けられる人にもなる。それは回り回ってあなたのためにもなり、より良い社会の創造にもつながるはず。だから私は若者ではありませんが、そんな風に生きたい、生きていこうと思っています。