T1 park 記者
学長就任の感想と抱負を。 半藤 今年4月から学長に就任して以来、様々な方々と接する機会が増えました。これが学長就任のメリットだと思います。これまで私の人生の中で知らなかった別の世界で活躍されている方々の知識に触れることができ、とても新鮮に感じています。 やはり人間は新たなものや自分と異なる考え方に接することで成長できるのだと改めて実感しているところです。私は歴代学長の中では一番若く、これからも多くの人との出会いを大切にしながら、まだまだ成長していきたいと思います。 T1 park 記者 熊本県立大学の近況を。 半藤 近年、カリキュラムの見直しを図ってきました。教育体系を共通教育と専門教育の2つに分け、共通教育では基盤教育と教養教育により視野を広げてもらいます。その上に立って専門性を学んでもらうことを目指しています。また、学問の枠を超えて体験的に学ぶ実践的な活動を数多く用意し、机上と実践の二方向から自分を形成する新たなカリキュラムで授業展開に取り組んでいます。 学問とは真実に向かうことです。私たちは嘘ではなく、真実を知りたいものです。人と会えば、その人の本音を知りたいわけです。人間には本当のことを知りたいという本能があり、それが学問を作り上げてきました。色々な分野で真実は何かということを探っていくのが学問です。ですから学生の皆さんには、真実と嘘を見極めること、つまり真贋を見極める目を養ってもらいたいと思います。 T1 park 記者 大学生活を通じて学生に身に付けて欲しい力は。 半藤 一つ挙げるとするならば「突破力」です。結局人生は大なり小なりの課題があって、それを克服していくことの連続です。例えば、「今日のお昼に何を食べようか」のような簡単で小さな課題もあれば、「どの大学に進学しようか」といった結構努力を必要とする中位の課題もあります。あるいは「どういう仕事に就こうか」という深刻な課題、または「どういう人と結婚しようか」という一生に係る重要な課題などあらゆる課題に直面します。簡単に克服できる課題からとても重要な課題まで幅広くあります。しかし、いずれにしてもこうした大小様々な課題を常に乗り越えて進んで行くのが人生であり、言い換えるならば課題の無い人生は無いと思うんです。人間は死ぬまで課題を乗り越えてくわけです。そう思ったときに、熊本県立大学の学生の皆さんには、一つでも二つでも色々な課題を突破できる「突破力」を身に付けて欲しいと思います。 |
T1 park 記者
学長が若い頃に経験されたことで、今の自分に役立っていることは。
半藤
多くの人と同じように、スポーツや音楽など色々とやってきました。高校生、大学生の時代を振り返ってみると、とにかく自分探しをしていたように思います。これから自分がどうなっていくのか、何をすれば良いのか、どう生きていけば良いのか、ひたすら考えていたように思います。例えばある時には一人で旅に出るとか、または、グループを作って音楽活動をしたりとか、時には図書館に籠ってじっと本を読んだり、仲間とディスカッションをしたりだとか、こうしたことを通じて自分自身を見詰めたり、多くの人と係わってみたりしながら、自分に必要なものは何か、自分に欠けているものは何か、これから生きていくうえで何を吸収するべきかと、考えていました。総じていえば、それは自分探しだったと思います。
T1 park 記者
学長の座右の銘は。 半藤 「至誠通天」(しせいつうてん)です。誠を尽くせば、願いは天に通じるという意味です。もし自分の想いが相手に通じなければ、それは真心が足りないからだということです。または「真心」を「努力」と置き換えても良いかもしれません。真心を尽くすということが可能性を拓くということだと解釈しています。 T1 park 記者 熊本地震の復興についてどう考えますか。 半藤 日本人は歴史の中で何度も今回の地震のような天変地異に遭遇し、その度に絶望に打ちひしがれ、悲嘆に暮れるのですが、決して屈することなく、立ち直ってきました。私たちは常にめげずに復興して生き続けてきた歴史を持っているのです。その歴史を持つ国民であることを自覚し、その一員としてこれからどう生きていけば良いのか、自分の答えをそれぞれが探していけば良いのだと思います。 T1 park 記者 若者への応援メッセージを。 半藤 私も年齢を重ね、過去の方が未来よりも長くなってきました。ですが、若い皆さんはまだ確実に未来の方が長いのです。ということは、これからの時代を生きるのも、創るのも、若者の皆さんです。上の世代が創り、残すよりもこれから未来に生きる若者たち自身が責任を持って未来を創っていくべきだと思います。それを権利だと思ってもらいたい。「自分たちが未来を、これからの時代を創るんだ」という気持ちを強く持って下さい。 上の世代に頼っても良いのですが、頼るだけの気持ちではいけません。人間というのは、しばしば前例主義になってしまいがちです。前例主義は過去を踏襲していくことであって、時には大切かもしれませんが、何も考えないことに等しいところもあり、実は楽なんです。しかし、それでは豊かな未来、新しい未来は巡ってきません。ですから、若者の皆さんには、前例主義に陥ることなく、「未来のために、創造的に生きよ」と伝えたい。自分でこうしたけれども本当にこれで良いのか、もっとこうしたら良いのではないだろうか、これを止めて新たなものを創ってみてはどうだろうか、と常に考えながら創造的に生きることはとても大変です。しかし、これってわくわくする面白いことなんです。つまり、何も考えずに楽に生きるか、または、大変だけれども自らわくわくしながら未来を創るか、どちらを選ぶかと聞いた時に、今の若者たちには後者を選んで欲しいと思います。 T1 park 記者 ありがとうございました。
Writer M.Ujino
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