【プロフィール】
1949(昭和24)年7月30日生まれ。佐賀県出身。同志社女子大学芸学部英文学科卒、聖和大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、西宮教会こひつじ幼稚園教諭を経て、1984年聖和短期大学(兵庫県)着任。2009年4月から2015年3月まで学長。2016年4月九州ルーテル学院大学学長に就任。趣味は音楽鑑賞、読書。 若者へのメッセージ 「違いを恐れず、多様性を楽しむ」 T1 park 記者 学長就任の感想と抱負を。 広渡 4月1日に就任して2週間経ったところに熊本地震でした。21年前の阪神淡路大震災も経験していましたので、人生で2度目の被災となり驚いています。本学では体育館や一部校舎で大小の被害がありましたが、学生および教職員に人的被害が無かったことがせめてもの救いでした。何とか立入禁止区域を設けまして5月13日から授業を再開することができました。学生の元気な声がキャンパスに戻ってきた時、学校というのは学生がいないと意味のない場所なんだと実感しました。教職員一同、当り前のようなことが決して当り前ではないということを改めて思い、こんなに嬉しいものかと感じました。余震が続く中、一日一日を大切に考えながら、学生と教職員が一緒になって安心して安全に学べる環境の復興に向けて力を尽くしたいと思っています。 T1 park 記者 熊本地震では学生ボランティアも活躍されていましたね。 広渡 今回の地震で九州ルーテル学院は、避難所として中高校の新しい駐輪場と安全を確認した教室を一部開放しました。多い時で約200人の方々が避難されてきました。中高校の先生、大学のボランティアセンター、そして学生ボランティアが協力して対応に当たりました。また、それとは別に私たちの知らない学外あちらこちらの避難所で本学の学生たちが自発的にボランティアとしてお手伝いをしていました。後日お礼のお手紙が大学に送られてきて初めて知ることができました。学生自身も被災者であるにもかかわらず、休校中に積極的にボランティア活動に携わったことをとても嬉しく思いました。あるお手紙には「指示を待つのではなく、自発的に考えたアイデアに基づき行動してくれた創造的なボランティアだった」と書いてありまして、熊本を担う若い人たちの力に希望を感じました。 T1 park 記者 九州ルーテル学院大学の魅力は。 広渡 少人数制の教育だと思います。一学年150人ほどの熊本でも小さい大学です。教職員と学生の距離が非常に近いところが魅力と言えます。また、関西や関東の大学とは違う地方ならではの大学の勢いを感じることができます。全国レベルの知名度は無くとも地元に根付き、新たな視点で色々なことに挑戦していく大学を目指していきたいと思っています。 T1 park 記者 大学生活を通じて学生に身に付けて欲しい力は。 広渡 本学は今年で創立90周年を迎えます。創立以来受け継いできた建学の精神を「感恩奉仕」という言葉で表わしています。これには深い意味がありますが、「恩」というのは「神の恩恵」つまり、「恵み」に対して感謝することだと思います。その「恵み」というのは色々な解釈があると思いますが、私たちには一人ひとり違う個性(つまり「豊かさ」)が与えられているのだということです。その「豊かさ」を自分なりに育てていって、その「豊かさ」を他者のために活かす、つまり自分の持つ個性を将来、社会のために使って頂きたいと思います。 そのためにも大学生活を通じてまずは、自分の持つ「豊かさ」に気付いて欲しいと願っています。今の学生の多くは、自分に自信が持てず、他人と違うことを恐れて、皆と同じでなければ不安になる傾向にあると思います。でも、やっぱりそれぞれに与えられた個性の違いには意味があると思いますので、それを花開かせていってもらいたいですね。 T1 park 記者 学長が若い頃に経験されたことで、役に立った思い出は。 広渡 私自身は、小さい頃は神経質で臆病なタイプだと言われてきましたが、一方で、自分が知りたいと思ったら意外に大胆に動く性格だと思います。それがどこから来ているのか考えてみると、自分の知らない世界を知りたい気持ち、やっぱり好奇心が強いんだろうなと思いますね。 大学は、生まれ育った九州を離れ関西の大学に行きました。初めは文化の違いにカルチャーショックを受けました。卒業後しばらくは大学の事務職員として勤務しましが、幼児教育について学びたいと思い、30歳で聖和大学大学院に入り、33歳で幼稚園の先生として3歳の幼児クラスを担当しました。自分よりも若い先生方に囲まれ、ここもまた全く違う世界でした。仕事はもちろん大変でしたが、子どもの世界の不思議さ、おもしろさ、豊かさを知ることができました。その後大学に戻り、幼児教育を目指す人材の養成に携わる道に進みました。 T1 park 記者 大学では英文学を学ばれたんですね。 広渡 リベラルアーツを重視する大学で英文学を学びました。一見、実践的な幼児教育や今の仕事とは全く関係ない分野のように思われるのですが、後から考えてみると意外につながっていて、非常に役に立ったと思います。文学というのは人間について考え、学びます。そこで、人間を理解する力、子どもを理解する力を養うことができたと思います。 T1 park 記者 趣味は。 広渡 前職の大学でも学科長や学長を約10年務めてきましたので、なかなか趣味の時間が取れませんでした。あえて言いますと、読書と音楽でしょうか。幼児教育の中でも特に「言葉」について教えていましたので、児童文学にも興味があります。絵本というのは小さい子どもたちだけのものではなく、奥が深い読み物です。今でも時々本を開いて楽しんでいますね。音楽はもっぱら聴く方で、クラシックやジャズなど幅広く楽しんでいます。 T1 park 記者 学長のモットーは。 広渡 好奇心を失わないということです。知らない世界を知りたいという姿勢は常に大切にしています。今回熊本に着任する際も、周囲からは出身地の佐賀県と同じ九州だといっても住んだことのない知らない土地にこの年齢でよく移住する決心をしたものだと言われました。知らない土地での苦労は覚悟してきましたが、熊本に来ることはやはり不安よりも魅力的でした。好奇心に年齢は関係ないと思います。 T1 park 記者 若者への応援メッセージを。 広渡 「違いを恐れず、多様性を楽しむ」ということです。とにかく若い時には、同じ考えの人同士だけで集まるのではなく、多様性を持った人たちと出会って欲しいと思います。つまり、若い時から自分自身を小さくまとめようとはせず、あえて自分とは違う世界や考え方に触れてみて下さい。そうすることで「自分が知らなかった自分」にも出会うことができると思います。 そして、違いを理解し、認め合うことで、自分の持つ「豊かさ」に気付いて下さい。もし自分の価値観だけに凝り固まってしまえば排除の精神が生まれてしまい、自分と違う人たちを受け入れがたくなってしまいます。しかし、若い頃から色んな考え方があるということを少々ぶつかり合ってでも経験しておけば、自分と違う価値観を受け入れやすくなり、将来、自分の「豊かさ」を深めることにつながっていきます。 T1 park 記者 ありがとうございました。
Writer M.Ujino
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