このように多くの魅力を備えていることから、熊本地震の後でさえ観光客は順調に増えていました。ですが、やはり新型コロナ以降は厳しい状況になっている、というのが実情です。今はアフターコロナを見据えながら、市民および関係者の方々による頑張りのおかげで、どうにかやっています。
より良い上天草のために
地元のキーマンを育てたい
―今後、力を入れていきたいことは。
堀江
主要の観光産業と共に、上天草の原点とも言える1次産業を、より発展させることです。海に面する立地を活かした水産業はもちろん、農業も発展させていく。そうして、この豊かな水産資源や土地を徹底活用することが、結局は食品加工等の製造業や、観光業の発展にもつながります。
また全てに言えることですが、町づくり・地域づくりというのは、結局は人、「人材」だと思うんです。国が主導する『地域おこし協力隊』という制度がありまして、外部の人材を活用して地域振興を進めるというものですが、上天草もこの制度を活用し、いろんな方にご尽力頂いています。かといって「人任せにしてはいけない」とも思っています。最後は結局、地元の人の頑張りこそが大切なんだと。ですから上述した産業の担い手を始め、より良い上天草をつくる上での「地元のキーマン」となるような人材を育成していく、これが非常に重要なことと考えています。そのため地元のキーマン育成、さらには移住を促し、より多様な人材の流入を進めたいところです。
また移住者を含む住民はもちろん、観光客とも違う存在でありながら、様々な形で地域に関わる方たちの数を、行政では「関係人口」と呼んでいるのですが、そうした関係人口も増やしていきたいですね。たとえば上天草で獲れた魚は、東京の市場で取引され、江戸前の寿司に使われたりもするんです。そうした、上天草と間接的にせよ深く関わるようなお店、企業や仕事、人、そうしたものがもっと増えていくと、実際の人口以上に活発な町づくりへつながるのではと思っています。
20代後半。沖縄の海。スキューバダイビングに夢中だった。
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いろんな場所への旅行を通し 街を客観的に見るクセがついた ―熊本の現在と未来について思うことは。 堀江 熊本市内は、おしゃれで、何でもある街です。だけど、これからは東京にも福岡にもない、熊本にしかない「キラーコンテンツ」も重要になってくると思います。逆に言うと、そうしたキラーコンテンツを生み出すことさえできれば、10年後には福岡にも負けない都市となり、人材も増えていくかもしれない。よりスピーディーでグローバルになっていくであろう今後、そうした未来もありえなくはないと思います。 なお「キラーコンテンツ」を生み出すことは、私たち上天草市にとっても同様の課題です。ただこういうのは、行政だけがいくら頑張っても無理だと思うんですね。熊本市にせよ上天草にせよ、行政と民間がしっかりとタッグを組み、力を合わせて取り組んでいくべき問題だな、と。 ―学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。 堀江 大学ではサイクリング部に入ったんですが、これが思っていた以上にハードなところでして…。キャンパスのある北九 |
でもそのおかげで、旅行が好きになりました。卒業してからもアメリカをバスで回ったり、カリブ海の島に行ったり。それもただ遊ぶというより、街の個性や歴史を観察するように歩く、街を直に感じる、旅行先では自然とそうするようになっていきました。
そんな経験を通して、街や地域を「客観的に見る」クセがついたと思います。私は生まれも育ちも上天草ですが、他のいろんなところを見てきたからこそ、上天草市の課題も、強みも見えてくる。そうした意味では、まさに市長として働く「今」に役立つ経験だったのかな、という気がします。
円満に解決できない問題もある
でも「諦めたらそこで終わり」 ―座右の銘は。 堀江 「諦めたらそこで終わり」…マンガの中のセリフとは少し違いますが、『スラムダンク』の安西先生の言葉ですね(笑)。私、大好きなんです。 私に限らず地域の長、また経営者なども同じだと思うんですが、どうしたって円満に解決できない問題というのが、世の中にはあるわけです。そしてどうにかしようと頑張っても、誰かは喜ぶけれど、他からは違うと言われたり。 だけど、そこで諦めたら本当に終わりですからね。どんなにストレスフルでも、やせ我慢して大丈夫な顔で、小さなことからでも手をつけていくしかない。そう思いながら、今もやっています。 ―若者へメッセージをお願いします。 堀江 SNSなど、オンラインでの交流が非常に発展していますよね。このコロナ禍でも細かいコミュニケーションが取れるなど、良い面も多くあるとは思うのですが、本当はやっぱり「人と直に会う、肌で触れ合う」ことが大切だと思うんです。 いろんな人に肌で触れ、同じ場所で会話する、そうした経験からでしか得られないものって、あると思うんですよ。一 |
肌で触れ合えと言われても、もちろんしばらくは難しいですよね。ですがそもそもコロナ前でも若い方々は、オンラインでの交流に比重を置きがちだった気がします。ですからアフターコロナの際はいろんな人と肌で触れ合い、未来につながる強いつながりを築いてもらえたらと思います。