T1 park 記者
普段の練習はどのような感じですか。 原氏 地味ですよ。まず動きのパターン(絵コンテ)を考えていきます。隊列と動きを音楽のリズムに合わせて描いていきます。音楽と動きを調和させるための大切な段取りとなります。生徒たちは、この絵コンテを見ながら、音楽を暗譜(楽譜を暗記)して、演奏とは別に動きを体で覚えていきます。歩幅や角度を揃えたり、統一美をまとめていく地味な基礎動作の練習が基盤になります。他の強豪校に比べても練習場に恵まれているとは言えませんし、定時制があるので、午後6時以降は音が出せないんですよ。だから、その間この基礎動作の練習に特化しています。聴衆に感動を与えるには基本的なところが重要になります。 |
T1 park 記者
指導する上で注意している点は。 原氏 生徒の自主性を一番大切にしています。部の運営から任せられるところはすべて生徒たちに任せています。一から十まで言わないとできないような部は育ちませんからね。一人一人に必ず係りを持たせています。楽譜係、衣装係、天気予報係、会計係、接待係など20以上の係りがあります。担当の係りになった生徒が、責任を持って自分の役割を果しています。 マーチングバンドは「和」が大切です。個人競技ではないので、人とのつながり、チームワークを意識することでしょうか。その差は本番の演奏演技に出てきますからね。学年ごとの上下関係は日頃はあってもいいけど、演奏や演技に入ったときは上下関係を出さないようにと言っています。 卒業後に社会人として通じるような演奏演技を身に付けることももちろん大切ですが、部活動の運営面でも責任を持ってその仕事を全うしていくことが重要だと思っています。 |
T1 park 記者
練習の時と本番の時で違う点はどこでしょうか。 原氏 やはり緊張感でしょうか。座っての演奏だけであれば、ちょっと半音をはずしてもあまり目立たないかもしれませんが、マーチングバンドでは横一列で半歩踏み間違えただけでもはっきり見て分かります。そういうこともあって、非常に緊張感は高まります。だから本番前は生徒たちをできる限りリラックスさせてあげるようにしています。「本番で特別なことをやるんじゃない、練習でやっていることをやるんだ」といつも言っています。どうせ下手は下手なんだから、本番の時だけ120の力を出そうなんて無理な話ですよ。いかにして平常心で大会に臨めるようにできるかが大切だと思っています。 |
T1 park記者
部活動を通じて生徒に学んでもらいたいことは。 原氏 ちょっと話はそれますが、今、子供たちの間ではスマホが増えてますよね。つい便利なので、私も使ってしまいますが、あまり好きじゃないんですよ。何もかもが便利になりすぎて、人と一緒に同じ作業をして、一つのものを作り上げることが、少なくなっているように感じます。どこか自分たちの世界で閉じこもるような気がします。 やっぱり集団で、話をしながら、喧嘩をしながら一つ一つ積み上げて作品を作り上げていくことが大事だと思っています。だから日頃から、チームワーク、人を大切にすること、人との付き合い方をマーチングや吹奏楽を通して学んでほしいと思っています。 「一人一人顔も考え方も違うんだから、喧嘩するのが当たり前、それをわざわざ、摩擦が起きないように白々しくするのはやめろ!」といつも生徒たちには言っていますね。やはりお互い本音で言い合えるような関係を築いてもらいたいと思っています。マーチングバンドの技術的なところはもちろん指導しますが、それ以上に部活で培ったものを社会に出てから役立ててもらいたい。 そして、燃え尽きることなく、一生音楽を続けてもらいたいですよね。音楽の楽しさを身に付けて、感じて、卒業しても何らかの形で音楽を続けて欲しいと願っています。その思いのせいか、今でもOBバンドの活動は活発です。うれしいですよね。 |