T1 park 記者 学付ボート部の強さの秘訣はなんですか。 内藤監督 先輩後輩の関係が非常に良いところでしょうか。先輩は後輩の面倒見がいいですし、レギュラーをつかむという意味ではライバルでもあります。ボート部に対する思い入れのある生徒が多く、卒業後も顔を出してくれる子が多いですね。私が学校行事で遅れる時などはOB達が交代で練習を見に来てくれているので本当に助かっています。そういう絆の深さがうちの強さなのかなと感じています。 T1 park 記者 選手1人の力では勝てないと。 内藤監督 選手たちの頑張りはもちろんですが、保護者の応援やOB・OGなど周りのサポートを忘れてはいけません。備品や練習場所を提供してくれる方々の協力もあってのボート部ですから、文字通りみんなで勝ち取った全国制覇です。全国で勝つには色々な要素がありますがチームが同じ目標に向かってひとつになることが大きなポイントになります。 |
T1 park 記者 チームのベクトルの揃え方は。 内藤監督 未経験者が多く、ゼロからチームを創りますのでまずボート部の伝統についてきちんと話しますね。日本型経営と同じで学校や部活に対して愛着と誇りを持つことです。それから誕生日を皆でお祝いします。日程表にも必ず部員全員の誕生日を入れます。皆でハッピーバースデーを歌って、私が買ってきたセブン-イレブンのロールケーキを食べます。本当にちょっとしたことですよ。 あとはモチベーションを高めるためにも部活動のブログを書いています。校外での活動になるので校内でも彼らの努力の部分がが見えにくく結果だけ「ボート部は勝って当たり前」という感じになってしまいます。だから「お前らは凄いことをやってるんだよ」と生徒の頑張りを認めてあげる事が大事です。 生徒に対しては「学校生活を大切にしなさい、皆から応援される選手になりなさい」と言います。型にはまらないのがうちの学校の良さでもあるのですが、それだけじゃ勝てません。責任あっての自由なんだということをきちんと教える必要があります。私たちが握るオールに伝統、感謝、責任を感じなさいということですね。 |
T1 park 記者 その経験をもとに監督が導くほうが早いのでは。 内藤監督 確かに短期間で強くするには指導者主導でやらせる、これが絶対早いと思います。だけど長く維持していくことを考えると自分たちで動く伝統、チームのカラーを作った方がいいんです。昔は細かく指導したこともありました。監督1年目は大学の後輩が熊本に転勤してきた事もあって2人でビシビシ指導しました。外部の血が入ったのも良かったと思いますが男子クオドルプルでインターハイ優勝をすることができました。初優勝が昭和62年ですので19年ぶり二度目の全国優勝です。ただ、そういうやり方はうまくいく時もあるし、それが合わない時だってあります。 馬場先生は厳しかったですけどすごくアットホームな方でした。試合で勝っても負けても常に笑顔なんですよ。練習メニューも自分たちで決めさせてくれました。そういう先生だったので皆この場所に帰ってくるんですよね。馬場先生はよく「練習で泣いて試合で笑え」とおっしゃいました。これは絶対に引き継いでいきたいと思います。 |
T1 park 記者 最後に熊本の学生に向けて声かけを。 内藤監督 大好きな原辰徳さんの言葉で「夢進(むしん)」という言葉があります。最近は悲しいことに夢を持たない子が多いです。すごく現実主義というか中年のような疲れた10代が多いですよ。夢を持つと人生は楽しくなります。ボートもそうですが苦しいからこそどう楽しむかが大事。そのためには周りの人の応援が欠かせません。感謝を忘れず仲間とともに夢に向かって煌めいてください。 我々大人は生徒達が夢に向かって頑張れるような仕掛けをたくさん作ることで若者の「シンドイ」を「エンジョイ」に換えていけたら嬉しいですね。 ←くまもと経済 2013年8月号にも 内藤監督の記事が掲載されています。 |