T1 park 記者
熊本マリスト学園の近況を。 岩永 熊本地震で被災しまして、約1カ月間休校しました。まずは生徒たちの安心、安全を一番に考え、少しずつ復旧・復興の整備が進んでいる状況です。 本校は創立以来男子校だったのですが、2000年を節目に男女共学に移行しました。男女共学から16年目になりますが、ようやく違和感がなくなってきたように思います。女子生徒がコツコツ勉学に励んできましたので、男子生徒も刺激され、頑張っています。 T1 park 記者 部活動も活発ですね。 岩永 部活動では伝統的にハンドボールや空手、最近ではソフトテニス部も活躍しています。文化系では、昨年の夏にディベート甲子園全国大会で初出場、初優勝という快挙を成し遂げました。さらに、その生徒たち全員が難関大学に合格するなど進学面でも成果が出ています。 限られた時間の中で、学業面だけでなく部活動にも精一杯取り組みなさい、というのがマリストの教育です。 T1 park 記者 学校生活を通じて生徒に身に付けて欲しい力は。 岩永 「他者の幸せのために生きる」力を身に付けてほしいと思っています。サポートを必要としている人たちに、素直に手を差し伸べられる人間になってほしい。校訓「信・望・愛」は、カトリックの精神を根底に、健全な思想をもって、社会に貢献できる有為な人間となるよう説いています。マリストの卒業生に医歯薬系の進路選択者が多いのもその表れです。 今回の熊本地震で、避難所での生活を経験した生徒も少なくありませんでしたが、多くの生徒が自らも被災者でありながら、ボランティアとして避難所で積極的に活躍してくれました。「他者の幸せのために生きる」ことを行動に移してくれています。 T1 park 記者 「信・望・愛」の意味は。 岩永 これは新約聖書の「コリント人への第一の手紙」の一説に由来しています。「信仰、希望、愛」から最終的に「愛」が大切だという表現があります。「愛は人の信なり、生きる望なり」というように「愛」が根底にあるからこそ、他者の幸せのためにアクションを起こすことができるということです。愛するが上の行動が他者を幸せにしているかを考えて行動しなさいと日頃から生徒はじめ教職員の皆さんには言っています。「他者の幸せのために生きる」という言葉で高校時代を振り返る卒業生も数多くいます。 全校集会の時には、我らの目標を空手部の音頭で唱和するんですよ。「鍛えよう精神と身体、努めよう完全学習、励もう朋友責善の道、守ろう礼節と言責、誇ろうマリストの愛読精神」というように。つまり、こういう目標に沿った努力がどこにつながるか、その着地点が「他者の幸せのために生きる」ということです。ですから常にベースにはこの言葉があります。ミッションスクールとしての在りようだと思っています。 |
校長が若い頃に経験されたことで、今の自分に役立っていることは。
岩永
小学生の時に骨髄炎にかかりまして、足を悪くしました。元々運動は好きでしたので得意だった走ることができなくなり、これからの自分の将来は一体どうなるのだろうかと若いながらに不安に感じたことを覚えています。一時期は大学進学も難しいかと悩みました。しかし、父親から将来迷惑を掛けるよりも、今のうちに迷惑を掛けておけと言われ、県外への進学を決心しました。その時までは肉体的なハンディをやらない、やれないことの言い訳にしていたんですね。思い切って県外に飛び出したことでマイナスに向かう自分ではなく、何とかチャレンジしていく自分を見つけ、変えることができたように思います。それが自分自身をプラス思考で、アグレッシブにした大きな転機だったように思います。
T1 park 記者
大学時代は。
岩永
大学時代は英文学科を専攻していました。サークル活動ではカトリック研究会(通称・カト研)に席を置いて勉強しました。部屋代の代わりに、住み込みで守衛の仕事をしながら大学で学びました。苦学生と言えばそうだったかもしれませんが、楽しい学生生活を送ることができたと思っています。
T1 park 記者
校長の座右の銘は。 岩永 自分の性格として何事にもブレーキが利かず突っ走ってしまうところがあると思っています。ですので、自分自身に言い聞かせる意味でも大切にしている言葉があります。それは「人もし全世界をもうくとも、もしその魂を失わば、何の益にかあらん」という言葉です。つまり、この言葉が意味しているところは、全世界の富を全て手に入れたとしても、死んでしまったならば、自分のためには何にも使えない。この言葉から感じることは「物欲に支配されるな」と物欲の世界に支配されることなく、人間として与えられた生をどうやって生きていくべきなのかを常に考えるように、私に言い聞かせているように感じています。家がカトリックでしたので、その祭壇に聖書の一節が額縁に入れられて置いてあり、幼少の頃からこの言葉がずっと記憶に残っているんですよ。今でもこの言葉を常に意識のどこかに持つようにしています。 T1 park 記者 若者への応援メッセージを。 岩永 新約聖書の一説にタラントンの例え話があります。タラントンとは古代の貨幣の単位で、主人が3人の師弟に異なるタラントンを分け与える話です。ある者には5タラントン、ある者には2タラントン、そしてある者には1タラントンを分けるんです。5タラントンと2タラントンを与えられた者は預かったタラントンを上手く使い、倍にして主人から褒められましたが、一番少ない1タラントンを預かった者は失敗を恐れ、それを地面に隠してそのまま主人に返し、酷く叱られたという話です。タラントンはタレント(才能)の語源にもなっています。 要するに、私たちにはそれぞれ異なったタレント(才能)があります。それをきちんと使うか使わないかが重要だということです。それぞれが与えられた才能を100%活かして生きていきなさいという教えだと思います。与えられている才能というのは全員が異なります。なかには自分にどんな才能や特性があるのか、自分ではまだ気付いていない人もいるかもしれません。しかし、これをやったら必ず光るというものを皆さん全員がそれぞれ持っているはずです。そういう才能が与えられているはずです。まずは、その才能に気付かなければいけません。そして、気付いたならば、それに磨きをかけ、それを世の中にどう返していくかを実践してもらいたい。ですから若い時には与えられた才能に気付き、それを磨きなさいということです。そして、人生を輝かせて欲しいと願っています。 T1 park記者 ありがとうございました。 Writer M.Ujino |