【プロフィール】
1975年11月26日生まれ。45歳。長崎県長崎市出身。 長崎東高校-九州大学大学院工学研究科修了(工学修士)。 バブコック日立株式会社(現・三菱パワー株式会社)勤務を経て、 九州大学大学院工学府修了(博士(工学)) 専門は伝熱工学、熱流体工学。 2004年八代工業高等専門学校 機械電気工学科助手、2007年同学科助教。 2009年熊本高等専門学校 機械知能システム工学科助教、2011年4月同学科准教授。 2012年より同校ロボコン部顧問に就任、同年『アイデア対決・全国高等専門学校ロボット コンテスト』全国大会準優勝。以下全て同大会にて、 2014年優勝・ロボコン大賞、2015年ベスト4、2018年ベスト4・ロボコン大賞、 2019年ベスト8・技術賞。2020年総合4位・技術賞。
全国大会で総合4位と
技術賞を獲得 |
― 熊本高等専門学校(以下、熊本高専)ロボコン部の近況を教えて下さい。
主な活動としては、まず高専対象のロボットコンテスト(以下、高専ロボコン)に向けたロボットの企画・製作、および大会参加ですね。また高専祭(高専での学祭のようなイベント)など学内外でのイベントを通して、地域の子供たちにロボット製作の技術・魅力を伝えるといった活動もしています。 当部のスタートは1975年ですが、結果が出せるようになったのはここ10年ぐらいでしょうか。2010年に初の全国大会進出、私が顧問になった2012年には、全国準優勝。また2014年には全国優勝、および優勝以上に評価の高い『ロボコン大賞』をダブル受賞しています。 |
例年GW直前にその年のルールが開示されるのですが、やはりコロナのため今回はそれが遅れ、その時は地区大会まで約ひと月の10月になって、ようやく製作に入ることができました。ただ各自自宅でやれることはやってましたので、それまでに設計自体はほぼ出来上がっており、ルールに合わせて調整していくだけで済みました。昔は全てをギリギリでやっていて後悔することが多かったため、反省して早め早めに進行していたことが、結果につながったかなと思います。
みんなのロボットなんだよ
まずは「創造性強化」。高専ロボコンは正式名に「アイデア対決」という言葉が入るほど、技術に加え、競技ルールの中で課題を解決するための「発想の豊かさ・ユニークさ」も重視されます。そんなクリエイティビティを育むために、私はまず「生徒たち自身に考えてもらう」ようにしています。そして、1人で考えるのではなくいろんな人の意見を聞くこと。これは、もう1つ強化したい「チームビルディング」にもつながりますね。
そもそも今のロボット製作は「設計する」「部品を加工し組み立てる」「制御する」等の様々な知識・技術が必要とされ個人で出来るものではなく、チームワークが必須となります。それに1人の発想には限界がありますから、視野を広げより良いアイデアへ発展させるという意味でも大切なことですね。中には全てを思うようにしたがる生徒もいましたが、そういう生徒には「君1人のロボットじゃないんだよ、みんなのロボットなんだよ」といったアドバイスをしたことがあります。
「人間力」を身につけて欲しい
高専は高校と違って、大学工学部レベルの教育を含め5年をかけて学びます。言い変えると卒業後、大半が社会で働くことを前提としているわけです。
ですから就職先で期待されるであろう知識・スキルを学んで欲しいのはもちろんです。しかしそれ以上に、社会に出た後も自ら学び成長していけるための基礎となる力、言わば「人間力」とも言える力を、意識的に身につけて欲しい。そして、そんな「人間力」と「技術」を高いレベルで組み合わせ、ものづくりを通して社会に貢献できる人材になること。それこそ私が本当に望むことですし、また本校の理念でもあります。
『foldmachine(洗濯物自動畳みロボ)』プレゼン動画より。テレビショッピング風の演出も高い評価を得た。
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― 学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。
長崎の高校から九州大学に進学したのですが、そこでは様々な国から来た留学生と交流したり、彼らの暮らしをサポートするサークルに所属していました。そして時にはそうした留学生同士の、話し合いの間に入ることもありました。 そうすると想像以上に意見の隔たりがあり、全く収拾がつかない事態になることもあるわけです。日本人同士と違いそれぞれ異なる文化·風習·歴史的背景があるわけですから、当然と言えば当然ですよね。でも私たちとしては、どうにか合意形成につなげたい。 そうした過程で私は、それぞれの考えをしっかり傾聴し尊重しながらも「共通点を探して」「 客観的に」問題を見る大切さを学んだ気がします。国や文化がどんなに違っても、同じ人間であるということ。そうした共通点をみんなに意識してもらった上で、なおかつフェアにコミュニケーションを取り続けていくと、物事がどうにか落ち着いたりするんです。 |
10年後の自分を想像・創造して
10年後の自分をぜひ、想像・創造して頂きたいと思います。そのためには当然、スタート地点である今の自分を見つめる必要があり、さらに今後の社会変化を考える客観性が求められます。
特にこれからの10年は、日本における産業の代表格「自動車」に象徴されるように、大きな変化が予想される時代です。そんな時だからこそ客観視することを忘れず、世の中の本質を捉える力を養えたなら、思い描いた10年後の自分に向かってきっと、道を拓けるのではないでしょうか。