竹原 英治 城北高校 校長 【プロフィール】 1950(昭和25)年4月8日生まれ。71歳。山鹿市出身。 鹿本高校-日本体育大学卒。 1973年4月、玉名高校に赴任(保健体育教諭)。 その後、倉岳高校、熊本農業高校、熊本西高校 にて同教諭を務める。 2003年より2年間、蘇陽高校校長。 2005年より2年間、県教育庁体育保健課長。 2007年より4年間、鹿本高校校長。 熊本県高等学校体育連盟会長を経て、2011年より 城北高校校長。 7つの新しい取り組みで いっそう進化する城北高校へ ― 城北高校の近況を教えて下さい。 新型コロナのため、やはり大変な状況ではあります。それでも建学の精神「人間をつくる」を実践するため、また本校スローガン「この坂を上れば希望がある(※城北高校は坂の上に位置している)」の〝希望〟である、「変わること、変われること」を胸に日々、全職員生徒で頑張っているところです。 具体的には、校訓である「誠実 明朗 忍耐」を備えた人間。また城北スピリッツ「自分のことより先ず人のことを思え」を実現できる、さらに人の多様性を認めることのできる人間の育成ですね。そのために本校では「仁と徳の実行」と題して毎朝、論語を音読する時間を設けています。また挨拶、掃除等を徹底し、利他奉仕の心を育てるよう努めてもいます。それはやはり、より良い社会、より良い未来の実現のため。もっと大きく言うと世界平和のために、そうした人間性が不可欠と思うからです。 またこれは、本校の新しい取り組み「7つの学び」の一環でもあります。「1. 多様性の尊重 2. 論語教育 3. ICTの活用 4. 読解力と想像力の重視 5. ディスカッション力・プレゼン力の育成 6. 地元・山鹿活性化のための取り組み 7. SDGsに沿った活動の実行」。この7つを主軸に現在、この城北高校をよりいっそう進化させていきたいと考え、実践しています。 AIとは違う人間ならではの 思考力・想像力を養っていく ― 今後、力を入れていきたいことは。 「7つの学び」の中でも、特に読解力・想像力の向上には力を入れていきたいですね。先に言った「心の教育」が重要なのは言うまでもありませんが、ここはやはり学校。起源は洋裁の教習所ですが、現在は「普通科(特進コース、普通コース、スポーツ科学コース)/調理科/看護科/看護専攻科/医療福祉科」と、5つの科を備えています。進学または専門的な仕事を志望する生徒ばかりですから、学力や高度なスキルの育成も欠かせません。 特に今後のAI時代、読解(インプット)し、考え感じたことを人に伝える(アウトプット)、そうした過程から得られる思考力・想像力、およびコミュニケーション力が非常に重 |
そして、次に「なにくそ力」、これを身につけて欲しいです。世の中は荒波ですよ、それでもそうした荒波に飲まれず、たとえどん底からでも逞しく這い上がる力。私たちはその頭文字から本校を「J高」と呼ぶのですが、これには「情熱の〝J〟」「ジャンプの〝J〟」、そして何より「字のごとく、這い上がる再起力を表す〝J〟」といった意味を込めています。その「J」の文字通り、JOUHOKU=J高のみんなには、いかなる困難にも負けない強さを養って欲しい。つまり「優しさと強さ」、この2つを同時に身につけて欲しいと思っています。要になると思うわけです。AIとは違う人間ならではの感覚や思考を育み、人間ならではのクリエイティブやつながりを実現する。そのために本校では、本を読み、感想文で終わるのでなく「感想を語る」全員参加型の大会、『ビブリオバトル』を開催しており、今年でもう4年目になります。
また彼らのアウトプットを育むには、私たち教育者のアウトプット力も向上させなくてはと思っています。SNS等多様なツールを駆使しての学校PRが当たり前になっている現状を踏まえても、そうした点もこれからの、本校の課題かと思いますね。
この2つを同時に身につけて欲しいと思っています。
IQだけでなく心の指数を高め
「仁と徳」を身につけた人材に
― 貴校での学びを通して、生徒に身につけて欲しいことは。
第一には、やはり「仁と徳」。私は漫画家・絵本作家のやなせたかしさんを尊敬しているのですが、その著作『アンパンマン』では、ヒーローが自分の顔をちぎって、飢えた人に差し出しますよね。この精神、素晴らしいと思うわけです。そしてアンパンマンほどではなくとも、やはり先に「思いやり」がなく
たとえ今は見えなくても
人生には希望がある
「謙虚」、そして「誠実」。何かトラブルがあった時、謙虚さと誠実さを忘れて対応すると、結局はより大きな問題に発展してしまいます。だからとにかく嘘をつかないということ、自分に非があれば、たとえ認めたくないことでも誠実に認めるということ。そう思って教師をやってきましたし、今後もそうありたいですね。
― 若者へメッセージをお願いします。
「大人は面白いぞ」、そう言いたいです。本校生徒に限らず、中には生きるのが辛いとか、大人になりたくない、そんな若者もいることと思います。
すでにお話したように、私も学生時代、劣等感と挫折感に苛まれました。だけど周りに支えられ、自分なりに頑張って大人になってみたら、楽しいことがいっぱいある。もちろん大変なこともありましたが、大人ならではの面白さ、やりがいや充実感、そうしたものをいっぱい味わってきました。だから、たとえ今は苦しいばかりだったとしても、「人生には希望がある」。そのことを胸に留め、前に進んで欲しいと願います。
(インタビュー/2021年8月31日取材)