T1 park 記者
チームを全国トップレベルに引き上げるコツは。 米田監督 そのチームを、あるいはその子をどのように変えることができるかによって結果は変わってくると思っています。生徒の中には能力はあるのだけれどもその能力を生かせない心の弱さを持った子もいるし、心は強いが能力を引き出せない不器用さを持った子もいる。日頃の生活の中からその子の特性を見極め、ベストな形で指導していくことが大切です。そのためには保護者や周りの協力が欠かせません。「私が学校で叱ったら家では怒らないでくださいね」とか逆に「私は今様子を見ていますので家でしっかり指導してくださいね」といった具合でうまく連携し、その他色んな面で協力してもらい皆でその子の力を引き出していく。子供たちには「日々是剣道」という言葉を使いますが、きちんとした日常生活を送ることがとても重要です。 |
T1 park 記者
逆に言えば日常生活を変えることで剣道も変わってくる。 米田監督 訓練をすればそうなると信じています。それを継続的にさせるのが練習であって、そのような継続力を持った人間に育てるために常に試行錯誤しているわけですから。技術も大事ですけど心が備わっていないと学ぼうとしないじゃないですか。きついから「もうこれでいいや」と、その考え方が駄目なんです。 T1 park 記者 剣道の試合は数分間ですが、体力的・気力的にとても苦しそうです。 米田監督 それは剣道に限らずみんな苦しいと思います。それをどうやって乗り越えていくかが大事なのかなと思います。何をやるにもきついのですが、それをきつくないと思えるのは「優勝したい」とか「勝ちたい」とか「こうなりたい」と思う志があるからでしょ。それがない子たちが「このくらいでいいか」と思う。(目標が)ない子には持たせないといけないわけでどういう話をして気づきを与えられるか。そこも気を遣いますよね。 |
T1 park 記者
70人超の部員がいればそれぞれに目標は違うのですか。 米田監督 基本的にはみんな日本一を目指して入部してきます。ただ同じ方向を向く中で若干の温度差があるということですね。誰だってレギュラーになりたい、全国優勝したいと思っていても皆がみんな掴めるものではない。その時にどうするのかと。諦めたり、いじけたり、その態度をとった時に人間性が出る。そういう子は選手になれないです。剣道でできないということは世の中に出てからもできないわけですから我々が責任をもって指導していく必要があると思います。やはり人間形成が色んな意味で「かつ」ことに必要なのかなと。己に克つことによって勝負にも勝つわけです。 |
T1 park 記者
それらは剣道にも活かされていますか。 米田監督 もちろんです。剣道は対人競技なので、相手と相対し動きや気攻めの中から流れを読んで攻撃を仕掛けたり、逆に仕掛けられたりとこの空間の勝負が常に繰り広げられています。ですから人の気持ちが分からない者はそういうところでやられやすいですね。 剣道の理念の一番初めに「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」と謳ってありますが、まさにその通りであると近頃感じるようになりました。若いうちはただ一生懸命生徒を指導して強くする事だけに力を注いでいましたので正直分かりませんでした(笑い)。常に自分の一生を懸ける思いで継続して取り組むという気持ちを持って生徒とともに成長していく中で少しずつ変化が出てきたように思います。 |
T1 park 記者
実力も調子も拮抗していれば別の部分が判断基準になるということですね。 米田監督 私の場合そちらを重視します。普段からチームを思って行動できる子と自分勝手な子、チャンスを与えられるのは前者です。少しの差であればそっちを選ぶかもしれません。それは先程も申しましたが日々の生活が剣道に表れると考えているからです。肝心な時ほどそれが出るんです。これはすぐには直らないので日頃の生活を口酸っぱく言う必要があるんですね。そこに理解を得られないとなんで俺ばっかり、なんでうちの子ばっかりとなってしまう。だから周りの理解と協力が必要なんです。日本一を目指すということは1人では絶対に成し遂げられないこと。幸いにも今勝つことができるのは全部みなさんのおかげなんです。 |
T1 park 記者
若者への応援メッセージをお願いします。 米田監督 当たり前の事を当たり前に一生懸命やること。自分が一生懸命やったことに対してつまらんと言われたら悔しいでしょ。悔しくないということは一生懸命してないということ。悔しい思いをしないと成長につながりません。負けたり、泣いたりというのは別に恥ずかしいことではないし、失敗してもそこから学べばなにも問題ありません。人間誰だって角があるし、色んなものにぶつかって丸くなっていくもの。角があっていい、怒られていいんです。そうすることで失敗は経験になり、その後の人生に活かされていきます。 T1park記者 ありがとうございました。 Writer T.Nakahara |