【プロフィール】
1967(昭和42)年12月9日生まれ。熊本市出身。熊本北高校‐日本大学文理学部卒、九州大学大学院修了。日商岩井メカトロニクス㈱勤務を経て、内閣官房副長官秘書、1997年熊本県議会議員初当選、5期当選。2014年12月熊本市長就任。趣味はドラム演奏と読書。 若者へのメッセージ 「臆することなく、飛び込め」 |
T1 park 記者
熊本市政の近況と展望を。 大西 近い将来、人口は減っていきますが、交通の利便性を向上させ、人の流れを良くしたいと考えています。そのためには、市電の延伸でしたり、バス網の再編などを考え、色んなことに取り組んでいきたいと思っています。 特にこれから桜町周辺や熊本駅周辺の再開発が進んできます。ここ5、6年で大きく変わり始めようとしているところです。熊本市の中心市街地が戦後最大の変革の時期を迎えることになります。そこで若者の意見をどんどん市政にぶつけてもらいたいと思っていますし、まちを良くしていくためには、どうしたらいいのか若い発想を聞かせてもらいたいですね。 地域のまちづくりも年齢の高い層の人達だけでなく、若い人たちも積極的に参加して頂き、世代や様々な枠を超えた「対話の出来るまちづくり」を目指していきたいと思っています。 T1 park 記者 仕事をする上で大切にしていることは。 大西 大学卒業後、会社に勤めました。仕事をしていると、何故この仕事が必要なのか、どうやって取り組むべきかなど、自然と疑問が湧いてくるんですよね。会社に勤めてまず学んだことは、常に疑問を持ち、ひたすら考え続けることでした。 疑問に対して自分の出した答えが正しいものなのか、ベストなものなのかどうかは、自分自身で突き進んでやってみないと分かりません。これは会社での業務に限らず、市政においても共通していると思うんですよ。そういう意味で、「常に考え続けろ!」と自分に対して言い続けることが仕事の上で大切だと思っています。 私もそうなんですが、近頃では分からないことがあれば、直ぐにネットで検索すると答えが出てくるので、何事も考えなくなってしまいがちだと思います。物事に対し思考停止に陥らないよう、自分なりに何故なのか、どんなことを意図しているのかなど様々な角度からしっかり考えることにしています。 そしてもう一つは、他人の話をしっかり聞くことです。常に人の話を聞き、何事も観察することを大切にしています。そうした習慣を持っていれば、色々な小さな変化に気付くことが可能になります。その感度をいつも養っておく必要があると思います。 T1 park 記者 若い頃に頑張られたことで、今の自分にとって役立っていると思うことは。 大西 特に勉強はあまりしなかったのですが、中学高校時代からとにかく本を読むのは好きでしたね。小説やエッセイなど色々読んでいましたよ。そして、音楽が好きでしたので、高校受験に合格したらドラム教室に通うことを親と約束していました。 ドラムにはかなり没頭しましたね。やっぱり一つのことにのめり込むのが好きで好きでたまらなかったと思います。ドラムと人生ってどこか似ているところがあるんですよ。ドラムを上達するには、ちょっとずつ、ある地点をクリアしていかなければいけません。一つ一つ乗り越えながら曲を弾けるようにステップを踏んでいき腕を磨いていくんですよね。ところが若い頃っていうのは一足飛びに自分の行きたいところに行きたがるんですよね。僕もドラムを始めてすぐの頃は一気に憧れのドラマーのようにドラムを叩けるようになりたいと思って真似したのですが、そればっかりやっていても駄目なんですよ。やっぱりその地点に到達するまでには恐ろしいほどの基礎練習をやる必要があり、僕もそのことに途中で気付きました。割と派手なことでも面白くない反復練習をひたすら繰り返す地味なことも地道にやっていないといけないんだなあ、と「努力をするプロセス」の大切さをドラムを通じて得たように思います。 高校時代は本当に音楽とドラムに没頭した思い出があります。音楽ではレコード会社のオーディションに受かったりもしましたし、本気でプロの道も考えていました。一方で、勉強の時間を割いてまでドラムに没頭していましたので、大学受験で失敗したり18歳から20歳頃までは、どこか中途半端な気持ちもあり、もがき、挫折感を味わったように思います。そうした経験があったから今の自分があると思います。その中からもやっぱり色んなことを自分で考え、人の話にしっかり耳を傾けること、基本的なことなのですが、その大切さを学んだような気がします。 そして挫折の経験から学んだことは、上手くいかないと感じたら、その問題がどこから分からなくなったのかを考えてみて、もう一度分からなくなった地点まで戻ってみるということでした。戻ってみると、分からなくなった原因に気付くことができます。仕事でも同じで、分からなくなったら必ず原因があります。そこに戻ろうという気持ちになれるかどうかなんです。それがなかなか自分が正しいと思い込んでしまうと戻らないものなんですよね。ですから一度立ち止まったり、戻ってみようと思ってみたりする冷静な自分を持てるかどうかが大切だと思うようになりました。 T1 park 記者 市長にとって音楽とは。 大西 音楽って世代を超えるんですよ。党派性も超えるんですよね。ですから、「この音楽いいな」と思う人は共通の感性があって、理屈抜きで共感が生まれるんですよ。 僕の好きな音楽でも、結構、若い人に受け入れて頂いたり、逆に年配の方の昔よく聞いていた音楽を教えてもらうと、僕にとっては「古い音楽でも新しい」と感じることがあるんですよ。そういう意味で「音楽」というキーワードをきっかけにコミュニケーションが深まると思います。そこから共通の話題が生まれ、対話になっていくんですよ。 市長っていうのは初めからそんな音楽は聞かないといった思い込みを持った人が多いかもしれませんが、そんなことはないんですよ。ファンク・ミュージックが大好きな市長がいてもいいじゃないですか(笑)。 T1 park 記者 座右の銘は。 大西 「至誠努力」です。やはり正直で誠実でないと人からは信頼されません。人からの信頼が無ければ、信頼されるために無理なエネルギーを使ってしまいます。だから最初から一つ一つ誠実に努力を積み重ねていることが大切だと思います。しかし、決して周囲の人から信頼されようにと思って行動するのではなく、己の心の中において自らが正直で誠実でいられるかどうかが一番大切です。 T1 park 記者 若者への応援メッセージを。 大西 まずは、やりたいことを見つけるために、自分の興味のあるものに対しては臆することなくどんどん飛び込んで欲しいと思います。僕が市長になって市の職員にも市民の中にどんどん飛び込んでもらいたいと言っています。やはり、自分の方からどんどん飛び込んでいかないと、自分で何も考えなくなってしまいます。ですから果敢に攻めてもらいたいと思っています。一番いけないのは、疑問に対して分かったふりをしてしまうことです。分からないことは自ら考え、答えを探していくと、解決する道は必ずあります。答えが出るまで諦めず、強い心を持って努力し、トライアンドエラーを繰り返してみて下さい。若者の特権っていうのは色んな疑問をぶつけることが許されることだと思います。 T1 park 記者 ありがとうございました。 |