部活・進学・就職全てで
良好な成果を収めてきた
―千原台高校の近況を教えて下さい。
約2年前に私が校長となって以来、「一生懸命は、カッコイイ」をモットーに頑張っています。実はこの言葉は、かつての赴任先でありこちらでも最後は校長を務めた、京陵中学校のキャッチフレーズ。一生懸命なんてダサいと言う人もいますが、本当はそうじゃない、凄くカッコイイことなんだよ、と。そうしたメッセージに強く感じるものがありまして、次に勤めた西原中学校でも、そしてこの千原台高校でも引き継いでいるというわけです。
その言葉通り、生徒・教員の皆さんが一生懸命にやってくれたおかげで、様々な成果を収めてきました。まず部活動では、女子陸上部が駅伝で県大会4連覇を達成。女子ハンドボール部、自転車部もこの3月に全国選抜大会へ出場、特に後者は2年生の1人が女子ケイリンで優勝もしました。2019年に新設されたeスポーツ部も、全国からチームが集った大会で準優勝するなど活躍。また部活ではありませんが、こちらも2年生の1人が英語スピーチの全国大会レシテーション(暗唱)部門にて、最優秀賞と文部科学大臣賞を受賞するという素晴らしい結果を残してくれました。
元々商業高校ではありますが、今では進学実績も良好です。スポーツ特待生を含めてですが、進学先には鹿児島大を始めとする国公立、および明治や法政といった難関私大も含まれています。もちろん実学にも力を入れており、普通科と並び設置されている「情報科」では、ビジネス社会に必要なスキルを重点的に学習。大学だけでなく様々な専門学校・企業等に喜んでいただける人材を送り出しています。なお上述の2科は現在進められている「熊本市立高校・専門学校改革」を受け、令和5年度入学生より『情報ビジネス探究科(通信制課程も新設)』『健康スポーツ探究科』に再編成される予定です。
またそのためには私たち教員のブラッシュアップが必要と考え、来年度には『魅力づくり部』という学内組織を新設します。どんな授業や指導がより望ましいか等の意見交換を教員同士で行うと同時に、時には外部の意見も取り入れていく。そしてより良い千原台高校をブランディングしていくというわけです。もともと高校教員は研修の機会が少ないと感じていましたから、この点は特に力を入れていきたいですね。
以上は突き詰めれば、より多くの方に「千原台高校を志望してもらうため」とも言えます。少子化に苦しむのは公立高校も例外ではなく、本校も定員割れを経験しました。今年は全コースで定員を満たすことができましたが、それに甘んじることなく10年後20年後も志望してもらえる、そんな高校になることを目指しています。
熊大サッカー部4年生、最後の大会に臨んだ頃の1枚。
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ピンチこそ笑顏で乗り越える
そんな頑張りができる力を ― 貴校での学生生活を通して、生徒に特に学んで欲しいことは。 「笑顏で頑張ることができる」力を育んで欲しいですね。私たちの頃は頑張るというと、歯を食い縛ってという感じでした。ですが時代も違いますし、今の子供たちはそもそも、そんな考えについていけないはずです。 ですから苦行のようにではなく、ピンチの時こそ笑顏で頑張ってくれたらと。私たちは頑張る=「顔晴る」と書くんですが、困難も笑顏で乗り越え、晴れ晴れとした顔で日々を送って欲しい。教育者として生徒に真に望むのは、やっぱり幸せに生きてくれることですから。 |
学生時代はずっとサッカー部でして、高校・大学ではキャプテンも務めました。
ですが、大学では周りの反感を買ったりもしました。高校で全国大会に行ったことが成功体験になっていたのか、大学でも同じようなリーダーシップを取り続けたところがあります。だけど大学生ともなれば部員も大人になってくるわけですから、それでは通用しないことも多かったわけです。
そうした経験のためか、過去の実績・成功に囚われず、柔軟に対応することが大切という思いがありますね。こうした考えは教育者としての自分に、今なお影響を与えている気がします。
人に矢印を向けるな、
自分に矢印を向けろ
― 座右の銘は。
これ1つ、というものがないんですよね。「人生の価値とは自分の価値に沿って生きること」「自ら学んで、自ら考え、自ら行動する」…そうした言葉を、紙に書き出したりはします。
ただ、それらの言葉に共通して言えるのは、自分の頭で考えることの大切さでしょうか。生徒たちが「ノリで」「流れで」ああしたこうしたと言うのを聞くと、まずいなと思います。特に情報過多の今、立ち止まってしっかり考えることなく、周りの言うことを鵜呑みにして自分の言動に移すというのは、本当にまずい。自分にも社会のためにも良くないし、それこそ「いじめ」にもつながるような、非常に危険なことだと思います。
― 若者へメッセージをお願いします。
自分の人生ですから、最後は自分で考え、自分で決めて欲しいと思います。
もちろんより良い判断のためには、ある程度の教養など適切な判断材料が必要。ですから私たち教育者は、より良い判断材料を提供できるよう努めます。だけど自分の人生、最後に決めるのは、責任を持つべきなのは自分なんだよ、ということ。言い換えれば、「人に矢印を向けるな、自分に向けろ」ということですね。これは平尾誠二さん(ラグビー日本代表・後に日本代表監督。「ミスターラグビー」と呼ばれた)の本で知った言葉ですが、周りのせいにしてしまったら、そこで自分の成長は止まってしまうわけです。
ですから仮に本校で問題が起きたとしたら、それは校長である私の責任。同じように皆さんも、自分の人生にしっかり責任を持って欲しい。そしてこの先どんな困難があったとしても、笑顏で乗り越えていける人になってくれたらと思います。
(インタビュー/2022年3月28日取材)