新しい時代を生き抜くために
柔軟な発想の教育を、元・広告マンの経験を生かして
―熊本デザイン専門学校の近況を教えてください。
九州産業大学芸術学部で6年間の講師経験後、2年前に熊本デザイン専門学校(略称/熊デザ)、1年前に熊本電子ビジネス専門学校(略称/電ビ)の校長に就任しました。東京と福岡の広告業界の第一線で企画制作した経験と大学で教鞭をとった体験を生かし、新しい時代に対応できる柔軟な発想の教育を目指しています。熊デザとの繋がりは四半世紀前、広告会社の熊本支社制作スタッフ時代に応援講師として2年間教壇に立ったという関係があります。
熊デザは創立30周年、これまでの卒業生は3353名。電ビは創立37周年、卒業生は5171名。両校の卒業生は日本各地に羽ばたき、それぞれの分野で活躍しています。就職率はともに90%超。これは学生、教職員の努力とともに長く教育に携わっている両校を社会が評価してくれた数字と思っています。
熊デザが輩出した卒業生には、日本映画のCG映像制作でトップクラス「白組」のデザイナー、人気アニメ“TARI TARI”“サクラクエスト”等の制作会社「PAワークス」のアニメーター、アウトドア製品「NORTH FACE」の日本型店舗設計デザイナー、などが活躍中です。
校長に就任し学科内の見直しに少しずつ取り組んでいます。例えば、「ファッションデザイン専攻」を「ファッションクリエイティブ専攻」に名称を変え教職員に授業内容を改革してもらいました。時代に合ったカリキュラムによって卒業後の可能性を広げていきます。少子化の中でも、今年の志願者数は例年になく増えました。特にメディア映像デザイン科は人気が高く、予想よりも早く定員に達するほどです。新入生が増えるのは嬉しいのですが、専門学校としての目的は、優れた人格・知識と技能を持った若者を一人でも多く育て社会へ送り出すことです。最終の結果が大切なのです。
産学連携という視点では広告の仕事を通じて親しい九州の企業やメディアとの連携パイプを生かそうと思っています。理事長に了解を得て、各業界の要人が集う「熊本キワニスクラブ」に入会したのもそのためです。産学連携はこれまでも教職員の努力で「再春館製薬所バドミントン部のTシャツデザイン」「天草市UIJターン促進WEB映像」「清和文楽人形浄瑠璃ONE・PEACE舞台衣装」などの社会連繫プロジェクトに学生たちが参加しています。また学校として公共広告機構ACジャパンに入会しました。今年度の公共広告学生部門コンペに応募したところ早速、優秀賞に1名入選したという嬉しいニュースが届きました。このように社会参加型授業をさらに強化したいと思っています。
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―熊本電子ビジネス専門学校の近況は。
電ビは創立以来「ビジネスの世界では“資格”が人物のスキルを測る評価基準の一つである」という考えの下、資格獲得に力を入れています。教職員の指導の成果として「秘書検定準1級」「日本秘書クラブ会長賞」「医療登録販売者合格」「CGエンジニア検定エキスパート合格」など在学中に多くの合格、資格取得者が誕生しています。
全国から注目され来秋に操業開始するTSMCが巻き起こす諸々の社会変化にも注目しています。工場立地周辺の菊陽町や大津町では様々な企業が支店や工場を建設中です。電ビを卒業する学生たちのITスキルを生かせばチャンスは今まで以上に広がるはずです。
―今後力を入れていきたいことは。
新しい時代の流れを学生に伝えていきたいと考えています。積極的に企業を訪問して、社会や地域が今どんな人材を求めているかなど情報をキャッチして授業に反映していきたいと思います。
―座右の銘は。
世界の映画人から今も尊敬を集め、古今の名作映画世界歴代ベスト10に「東京物語(1953年)」が選出され続けている映画監督、故・小津安二郎。その時は人気があり新しく見えても、時が経てば古臭くなる。小津安二郎の映画は制作され半世紀が過ぎ、言語や風習が異なっても世界中の人々が感動する。つまり『真に新しいものは、古くならない。』ということなのです。