創業70周年、米菓の製造販売から卸、物流、農業と事業を拡大。
次世代へのバトンタッチに力を注ぐ ― 貴社の近況を教えてください。 当社は1954年、米菓あられの製造からスタートし、父が製造、母が販売を続けてきました。今年で創業70年を迎えます。 1965年からは自社製品だけに限らず、明治、グリコ、森永、ロッテ、不二家、ブルボン、亀田、三幸、カルビーといった大手製菓メーカーさんの販売代理店として卸売業に取り組み始め、中国・四国、九州全域に広げてきました。同時に商品を運ぶための運送業も拡大してきました。今では自社の米菓あられ製造は全体の1割ほどで、卸売と運送が事業の大きな柱となっています。それに加えて、菓子の原料となる米などの農産品の生産、農業にも取り組んでいます。 個人的には、2022年に社長職を息子に譲り、現在はグループ各社を束ねる経営に専念しています。次世代に、上手くバトンタッチできるような体制づくりに力を注いでいるところです。 |
特別養護老人ホームも開設
― 今後力を入れていきたい取り組みは。
私は、バブル真っ最中の1982年に入社しました。今と同じように人手不足に悩む時代でした。入社してから米菓の営業販売をしていた頃、人手不足で、商品の注文伝票が物流部門で留まり、発送されていなかったというトラブルに遭遇したことは今でも忘れられません。そんなことがあり、自ら運送業に力を入れ始めました。
現在もまた、物流における「2024年問題」をはじめ、あらゆる業界で人手不足が深刻な課題となっています。IT投資が難しい中小の企業は苦戦するだろうと言われています。
こうした人口減少の時代にあって、競争激化で振り回されるよりも、事業者同士で協力し、一緒にやりましょうという企業さんは増えていくと見ています。だからこそ、「1+1=3」になるように企業経営を考えていくことがこれから先さらに大切になっていくと思います。
ポイントは「人」です。人が喜んで働くことができ、社員さんの健康、その背後にいる社員の家族皆さんの健康まで考えるような「人に優しい企業」を目指していきたいと思います。そうすることで、自然と人が集まってくる環境が整っていきます。さらなる生産性向上と社員の処遇改善に今後も力を入れて取り組んでいきたいと思います。
2018年には介護離職ゼロに向け、地域に貢献したいという思いからも、社会福祉法人善隣会・特別養護老人ホーム「画図重富苑」を開設しました。熊本の食材を使った食事の提供や入居者それぞれに応じた個別ケアで、その人らしく心豊かに笑顔で生活できるようにケアの品質と技術の向上を目指しています。
社会に参画する強い意識を
― 熊本の現在と未来について思うことは。 人口流出を食い止め、流入を増やすことです。熊本には魅力がいっぱいあります。進学や就職して県外に出ることだけが決してステータスではありません。たとえ3年間県外に出たとしても、必ず熊本に戻って来てもらいたいと思います。熊本は人材流出率が全国でも非常に高い地域です。出るのを制して、入るを増やす発想で、熊本の底上げを図ることが熊本の未来にとって重要だと思います。 そのためには、若年層の教育が鍵になると考えています。若い方々には社会に参画する意識を強く持ってもらいたい。まずは18歳になれば投票に行くことです。ぜひ政治や社会の仕組みに興味を持ってください。教育のカリキュラムでも学べるようにしていくべきだと思います。若者の育成に力を入れなければ、日本の未来は危うくなります。 |
誠実さ大切に、
継続することを大切に ― 学生時代の、今に活きる「経験・学び」を教えてください。 高校に入学する15歳にして第一志望の学校へ入ることができず挫折を味わいましたが、高校時代は体力づくりも考え、サッカー部に入部しました。当時、県内でもトップクラスの強豪校で、高校生になってからサッカーを始めた私は3年間ずっと球拾いばかりでした。しかし、サッカーに没頭し続け、最後の方には数回試合に出ることもできました。 高校卒業後は親の勧めもあり東海大学に進学したのですが、東京ではアルバイトに没頭し、あまり勉強せず2年間で退学しました。その後、もともと家業を継ぐものと決めていましたから、丁稚奉公として3年間米菓メーカーと問屋で働きました。それから熊本に戻り、当社に入社しました。 部活やアルバイト、丁稚奉公を通して、真面目に継続する力を身に付けることができたように思います。どちらかというと中高大学では勉強してきませんでした。だからこそ、社会に出てからは、しっかり頑張ろうと思い努力してきました。今でも継続する力だけは誰にも負けないと思っています。 |