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------- 貴社の近況を教えて下さい。
KMバイオロジクスは「人々の健康で豊かな未来に貢献する」という企業理念のもと、「ヒト用ワクチン」「動物用ワクチン」「血漿分画製剤」「新生児マススクリーニング」といった4つの事業を行う国内唯一の製薬会社です。2018年7月に化血研(化学及血清療法研究所)から事業を継承し、明治グループの一員として発足しました。
インフルエンザワクチンの製造では2021年度の生産量は国内シェアトップ。また、当社の『新生児マススクリーニングセンター』では赤ちゃんが生まれつき代謝異常などの病気を持っている可能性がないかを検査しています。この事業は熊本・福岡・佐賀県の自治体から委託を受け、年間約6万の検査を行っていて、熊本で生まれた赤ちゃんは全員KMバイオロジクスで検査しています。
現在は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発を最優先課題と捉え進めています。通常、ワクチンの開発には約10年かかると言われる中で、当社は2020年5月にワクチン開発を開始し、10か月で臨床試験を開始。現在は最終段階のところまで来ています。生産体制に関しては約2年間でワクチンの生産体制を整えることができました。ただし実際に製品として供給するには厚生労働省への申請と承認が必要なため、どうにか2022年中に承認が得られるように頑張っているところです。
新しい技術を活かして 熊本から世界に貢献していく ------- 今後、力を入れていきたいことは。 新たな感染症に対するワクチン開発です。 現在は新型コロナが流行していますが、今後も感染症の脅威はなくならないと思っています。一番の原因は、温暖化などの環境問題。感染症はアフリカなど熱帯地域を発祥とすることが多いのですが、温暖化によりそうした地域が広がっています。また、グローバル化によって、一部地域の感染症でも人を介して世界中に広がるようになりました。 ですから今回のパンデミックが収まったとしても、新たな感染症があちこちで、次から次へと現れる可能性がある。それに対して私たちは、とにかく予防する、もし感染してしま |
そのためにmRNAを活用したワクチンの開発など、新しい技術による製品開発に力を入れていきます。またそうした開発のため優秀な人材の採用にも引き続き力を入れていきますし、新技術獲得に特化したチームの新設も予定しています。
↑第二高校空手部時代、体育祭で応援演舞を披露した時のもの | 空手部での辛い日々を糧に 苦難を乗り越えてきた ------- 熊本の現在と未来について思うことは。 私は元々、抗菌薬トップメーカーである『Meiji Seika ファルマ』の人間でして、今も同社取締役を兼任しています。東京が本社ですから私も長く地元を離れており、弊社発足に伴って35年ぶりに、この熊本に戻ってきました。 そうして感じたのは、半導体を始めとした工業の活気が凄いなということ。県による積極的な誘致活動もあって、すでに名だたる企業の工業地となっていますし、数年後には半導体大手・TSMCも生産を開始しますよね。地場企業の技術力は一層発展し、地域経済も向上していくだろうと期待しています。 私は熊本にこれだけの企業が集まる理由の1つに、水と緑をはじめとした豊かな自然があると考えています。当社においても医薬品の製造に大量の水を使用するため、この豊かな水を守る取り組みに力を入れています。熊本の豊かな自然と、産業の発展をいかに調和させていくか。それが弊社も含め、今後の重要な課題になってくると思っています。 |
第二高校時代から、熊大の2年生まで続けた空手です。特に高校では先輩方にしっかり鍛えられました。大学に進学した際、空手部に入るつもりはなかったのですが、大学の空手部に高校の先輩がいらっしゃったため、その先輩が卒業されるまで空手部に所属させられました。
当時は嫌で仕方ありませんでしたが今思うと、人生の節目でその頃の経験が活きたことを実感します。あの日々を乗り越えたのだから今の苦難も乗り越えられる。そう思ってやってこられた気がします。変わっているかもしれませんが、私は苦難に直面すると、ワクワクする時さえあるんですよ。空手で先輩に鍛えられ「ちくしょう、もっと来い!」と思っていたあの頃を思い出すのです。当時は鬼のように厳しかった先輩ですが、今は恩人だと思っています。その方と今でも交流があるのは、私の人生にとって貴重な繋がりですね。
人と直に触れ合う経験を
大切にして欲しい
------- 座右の銘は。
「有言実行」ですね。熊本の男は、多くを語らず行動で示す傾向にあるようですが、私は周りに宣言するタイプ。そうして自分にプレッシャーをかけるわけです。
近いところで言うと、実はもう2年以上、大好きな酒を断っています。新型コロナワクチンの製造が実現するまでは飲まない、とみんなに公言しましたのでその通り耐えてきました。もうすぐ製造がスタートできる見込みですから、それからは控えていた分も飲むつもりです(笑)。
------- 若者へメッセージをお願いします。
人とのつながりを大切にして、本当に困った時に助け合えるような人間関係を築いてください。現在は新型コロナの影響もあって直接人と会うことがとても難しくなっています。在宅勤務や外出自粛の要請により、オンラインでコミュニケーションを取ることが増えていますが、私は重要な場面ではなるべく対面でコミュニケーションを取るようにしています。
私の人生を振り返ると、空手部時代に仲間たちと苦楽を共にした経験は特別な思い出ですし、人生における困難な場面でも大きな支えになってくれました。人とのつながりやそこから得られるサポートは、心の健康を支え、次に踏み出す力をくれると思います。
若い方々は今の経験を大切に、本当に困った時に助け合えるような人間関係を築いて欲しい。そして困難な場面を突破していって欲しいですね。