【プロフィール】
1946(昭和21)年10月3日生まれ。大分県直入郡久住町(現・竹田市)出身。1969年熊本商科大学(現・熊本学園大学)商学部商学科卒。1969年大久保武雄元労働大臣の秘書を経て、1983年から熊本市議会議員(9期目)、1989年学校法人開新学園理事長に就任。現在、開新高校、熊本工業専門学校、ながみね保育園を預かる。趣味は旅行、読書。 若者へのメッセージ 「人生生涯一学徒」 |
T1 park 記者
開新学園の近況と今度の展望をお聞かせください。 江藤 開新学園は、今年112周年を迎えました。明治37年6月に細川家の大奉行だった堀平太左衛門の子孫である創設者の堀勝太先生は、文武両道に優れ、徳望家として名高く、混迷蒼然たる世相にあって、時代の先駆者育成の大義を掲げ、本学園の前身「東亜鉄道学院」を創立しました。昭和23年に「熊本鉄道高等学校」、昭和37年に「熊本第一工業高等学校」、そして平成7年に「開新高等学校」と校名を変更してきました。若き魂に「独立・進取・敬愛・奉仕」の建学の精神を継承し、東亜鉄道学院としてアジアに進出するための人材育成という役目を果たしてきた歴史があります。これまでに約3万8千の生徒を輩出してきました。 また、開新学園としては、平成26年4月に熊本市東部地域の待機児童解消の一助になるべく、「ながみね保育園」を開園しました。地域にも恩返しをと思っています。また、昨年11月には耐震化事業に伴う開新高校本館の新築工事が竣工、今年3月末にはほぼ全体像が見えてくる予定です。 最近の傾向としては、卒業生の約70%以上が専門学校や4年制大学に進学しています。今後も開新学園は、開新高校、熊本工業専門学校を中心とし、県内外の日本の基幹産業の一翼を担う工業系の高等学校として高い専門性を持った人材の育成に力を入れていきたいと思っています。 T1 park 記者 学校生活を通じて学生に身に付けて欲しい力は。 江藤 私どもはこの建学の精神を継承し、「自主独立、相互協和、誠実勤勉」の三綱領を掲げ、師弟同行の実践に努めています。一技一能を身に付け、誰からも信頼される社会人になって欲しいと願っています。その第一歩として、まずは「挨拶」の重要性を感じています。「挨拶」を交わすことで、清々しい気持ちになり、勉強やスポーツ、何事にも集中できる姿勢が生まれます。そして、この「挨拶」を基に、家庭や地域においてもしっかりとしたコミュニケーションを実践して頂きたいと思います。 そしてもう一つ、何事においても、一度や二度の失敗でくじけない心の涵養が必要だと思います。学校生活を通じて様々な失敗があると思います。そこで、失敗の原因は何なのか、どう改善すれば良いのかを常に考え、試行錯誤しながらも着実に一歩一歩前に進んで行くことが重要であると思います。この歩みの積み重ねが人生そのものであり、どのような場面に出会っても一歩前へ進む努力を怠らない力を身に付けて欲しいと思います。 T1 park 記者 理事長が若い頃に経験されたことで、役に立った思い出は。 江藤 ある日、衆議院議員で労働大臣も務められた大久保武雄先生が熊本ホテルキャッスルに来るので挨拶に行くようにと当時住んでいた寮監の方に勧められまして、まったく知らなかった大久保先生を訪ねて行ったんですよ。大久保先生は挨拶を交わし、しばらく話していると突然「江藤君、東京に来ないかい」と言われまして、私は正直に「東京は行ったこともなく、全く知らないところです」と答えまして、「それでもよろしいならば、行きます」と返答したんですよ。それから一週間後、大久保先生が迎えに来られて、当時健軍にあった空港から東京に飛び立ったんです。それから大久保先生の秘書となり、中央政治の中心である東京や、地方政治の熊本において政治のイロハを学ぶことができました。これが運命の出会いでした。あの時東京に行かなかったならば今日の私はないと思います。 T1 park 記者 大久保先生との出会いが大きく影響しているわけですね。 江藤 はい。そして、理事長になった経緯があります。私が43歳の頃です。当時本学園の理事長を務めておられた大久保先生が「私が43歳の時に初代の海上保安庁長官になった、君も43歳だ、そこで学園を全て引き受けてくれないか」と、突然おっしゃったのが始まりで今日に至るわけです。大久保先生の想いはこれからもずっと継承していきたいと思っています。 T1 park 記者 大久保先生が魅せられた江藤理事長の魅力はどんなところだったのでしょうか。 江藤 大分県出身で、熊本には親戚がまったく無い状況で、熊本商科大学に入学し、縁があって大久保先生をはじめ多くの方々に出会うことができたからこそ今があります。私は大分の農家で育っておりましたので、昔から荒削りの男でした。今もそうかもしれません。ただ大久保先生からよく言われていたのは、「阿蘇の山の杉でも毎年少しずつでも枝を削っていけば立派な杉になる。だから、荒削りのところをよく削っていきなさい」ということです。こんな私の荒削りな部分に期待を寄せていただいたのだと今でも感謝しています。 教育に携わる仕事においても、この考えは大切なことだと思います。教育者の仕事は、良い先生を探して良い学校を構築するだけではなく、先生も生徒も共に良い部分を削り出し、磨きをかけ、そして良くしていくからこそ、教育の楽しみが存在するのだと思います。 T1 park 記者 理事長の座右の銘は。 江藤 「努力に勝るものはない」です。 努力に勝る天才はなしと言いますが、勉強にしても、仕事にしても、スポーツにしても、芸術活動にしても、常に努力が必要です。目的に向かって一心不乱に根気強く継続的にやらなければなりません。いわば、自分自身との戦いであり、これが今後社会の中で自らの人生を切り拓いてくために必要なのです。時には失敗や挫折もするかもしれません、誰でも失敗はするものです。個人でも、集団でも、偉い人でも必ず失敗はします。しかし、失敗は必ず努力で克服できると信じています。ですから「努力に勝るものはない、そうすれば必ず花開く」という気持ちを常に大切に思っています。 T1 park 記者 若者への応援メッセージを。 江藤 「後の月 仰ぎ生涯 一学徒」という大久保先生の俳句があります。9月の満月を「十五夜」、10月の満月を「後の月」と言います。つまり、十五夜の満月の後の月においても、「人生生涯一学徒」という気持ちで一生勉強して下さいということです。何歳になっても生徒の気持ちで何事にも臨んでいくことが大切だと思います。社会人になっても、分からないことは聞き、一生懸命学んでいくことが大切です。 T1 park 記者 ありがとうございました。 |