【プロフィール】
1955(昭和30)年1月18日生まれ、熊本市出身。 1973年熊本県立済々黌高校卒業、神戸大学農学部農芸化学科卒業、1985年九州大学大学院農学研究科博士課程修了(農学博士)。1985年ボストン大学医学部生化学客員助手を経て、1987年九州東海大学農学部講師、1991年同学部助教授、1997年同学部教授。2008年東海大学大学院生物科学研究科長、同大学院農学研究科長を併任。2014年東海大学農学部バイオサイエンス学科主任、2017年東海大学九州キャンパス長(学長補佐)・農学部長(併任)に就任。 専門はタンパク質化学。 S48年済々黌高校卒業 「「チャレンジ」することから 素晴らしい成果が生まれる」 |
明日の歴史を担う強い使命感と
豊かな人間性を持った人材の育成 ―東海大学の近況について教えて下さい。 荒木 東海大学は本年度、建学75周年を迎えました。創立者である松前重義博士は熊本県出身の、電気通信分野で「無装荷ケーブル通信方式」と呼ばれる画期的な発明をした人物です。この発明により電気学会から送られた浅野博士奨学祝金などをもとにして、私塾・「望星学塾」を開設しました。この塾が今日の学校法人東海大学の母胎となっています。戦後の荒廃期のなかで、明日の歴史を担う強い使命感と豊かな人間性を持った人材を育てることにより、「調和のとれた文明社会を建設する」という理想を高く揚げ、東海大学(1946年旧制大学認可、1950年新制大学認可)を設立しました。 現在、北海道から九州まで8つのキャンパスがあり、19学部75学科・専攻・課程(2018年度から)を有する総合大学となっています。熊本には認定こども園東海大学付属かもめ幼稚園と東海大学付属熊本星翔高等学校、そして東海大学(経営学部・基盤工学部・農学部・大学院)があります。大学の学部学科を紹介しますと、経営学部には経営学科と観光ビジネス学科、基盤工学部には電気電子情報工学科と医療福祉工学科、農学部には応用植物科学科・応用動物科学科・バイオサイエンス学科の3学部7学科が設置されています。ご存知のように熊本地震によって、阿蘇キャンパスが甚大な被害を受け、農学部の授業については熊本キャンパスを中心に実施し、一部フィールドを活用した専門教育を阿蘇キャンパスで行っています。 |
経営学部観光ビジネス学科では「インバウンド(訪日外国人)型観光」に力を入れていますが、この分野でも名産品開発やファームステイ(農場滞泊)など、農業県ならではのコラボを進めています。基盤工学部でもITを活用して先端農業の研究、特に植物工場やドローンを使ったIT農業などの研究を推進。このようにキーワードと考える農業(食品)と観光(食)を軸とし、熊本の地域活性化・地域貢献を果たしていきたいと考えています。
国際社会への貢献も重要ですが、特に地方では「地域に貢献できる人材」の成長が重要です。そのためには地域コミュニティと交流し、さまざまな課題に取り組み、それらを解決できる知識・スキルを体得することが必要とされています。その具体策として、本学は『チャレンジセンター』という取り組みを推進。これは学生が提案した企画を基に、学部学科・学年・キャンパスの枠を越えた30名以上の仲間が集まり、1年を通して活動。それを本学がサポートするというものです。
すでに「復興支援」から「ものづくり」まで、さまざまな目的を持つプロジェクトが活動しています。このような活動を通して、主体的に社会・地域に貢献できる人材供給を促しています。
多様な価値観に触れよう
―学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。
荒木
学生時代ではありませんが…九州大学大学院を修了した後、いくつかの選択肢の中から、私はアメリカの大学で研究員になることを選びました。
そこは成果を挙げないとすぐ解雇されるようなところで、他の日本人にはよく驚かれたものです。ですが私は最初の勤め先がそこなわけですから、こんなものだろうとしか思わない(笑)。不安定ではありましたが、「旅行では得られない、異文化・多様な価値観を肌で感じる体験」を若いうちに得ることができ、そこでの友人関係も含め「今に活きる非常に大きな資産」となっています。
ですから若い方には、今のうちにぜひ海外へ飛び出すことをお勧めしています。本学には世界20か国・地域の45機関の留学先が用意されていますので、私の学生時代と比べ非常に恵まれていますね。
荒木
「とにかくやってみる、動いてみる」こと。先ほど出たチャレンジセンターの「阿蘇援農コミュニティープロジェクト」というプロジェクト活動は、学生たちが人手不足に困る農家さんのお手伝いをするというものですが、震災後は活動を停止していました。
しかし、授業再開のその日に学生たちが集まり、自主的に再開。新年度からは、多くの新入生も加わり160名程がこのプロジェクトで活動を行っています。震災復興に大きく貢献して「食と農林漁業大学生アワード2017」で農林水産大臣賞を獲得、日本一の活動として評価されるまでに至りました。
先に述べた海外留学も含め、このように若い今のうちに、何ごとにも「まずはチャレンジする」姿勢が、素晴らしい成果を生む。そのことを胸に留め、願わくば実践して欲しいと思います。