T1 park 記者
日常生活で気をつけていることは。 宮部先生 大きな大会では朝の予選の時間がものすごく大事になります。ですから普段から早起きし、朝食もきちんと考えて摂る。そして休みの日には体を休めることも当然必要なんですが一番の目的は次のステップに行くための切り替え。ずっと張り詰めたままだと集中力が途切れますし、だらだら練習をしても結局やったことが身にならないので週に一回は必ず休みを入れるようにしています。 T1 park 記者 練習が目的にならないようにということですね。 宮部先生 そうです。あくまでも結果につなげるために練習する。その意識付けを普段から心がけています。レースのための練習ですからただ単に消化してほしくない。「しんどい練習をやっているのは勝つため」それを忘れないでほしいですね。 |
T1 park 記者
指導方針は「教えすぎない」とのことですが。 宮部先生 選手が自ら「求める」というところをつくっていきたいんです。今の子達は幼い時からスイミングスクールで水泳をやってきてキャリアは長いのですが、親に送り迎えしてもらい、プールではコーチにああしなさい、こうしなさいと言われて育ってきている。だから与えられて当然、考えなくても指示を受けて水泳をやってきている子が最近すごく多いように感じます。 全国で勝負するためには自分の中から追求する気持ちや探究心を持つこと。だからあえて最初から安易に与えない。もちろん本当に求めてきた選手に対してフィードバックはしていきますが、まずそこに行き着くためのヒントを与えます。言われたことをただ聞くのではなく、考えながら本当の意味で分かったというところに辿り着いた方が時間はかかるかもしれないけど後先を考えれば逆に早いんですよ。 |
T1 park 記者
ある意味、宮部先生ご自身との戦いでもありますね。 宮部先生 口を出したほうが早いですからね。でもそこはグッと我慢です。指導者も「それはこうだよ」って教える方が楽なんですけど、でもそうして楽して手に入れたものって身にならないでしょ?もちろん中には細かく指導する子もいますよ。中学生だとか水泳の感覚が育っていない子達については分かりやすい言葉で段階を踏んで指導していきます。しかし、ある程度自分で考えて積極的に自主的にやろうとする子に関してはポイントだけ押さえてあとは「どうなの?」ってやりとりですよね。 T1 park 記者 「詰め込み式」と「自ら求め考える」方ではどちらの生徒の方が成長していると感じますか。 宮部先生 やはり考えて自主的に取り組んでいる選手です。そういう子は練習に関しても無駄がないですね。漠然と調子が良い悪いではなく、やらなければいけないことにピントが合ってくるんです。例えば「かいても水をうまくつかめない」とか具体的な質問がくるので私たちも的を絞って必要な指導ができるようになります。 |
T1 park 記者
伸びる選手というのはどういう特徴がありますか。 宮部先生 細かいですね。何事でもそうですが、ひとつひとつの小さなことの積み重ねが時間とともに大きな差となって現れてきます。勝ちたいという気持ちは皆それぞれに持っています。一流選手はそのために必要な条件づくり、下地づくりっていうのを大事にしていますね。二流、三流の選手は「なんとか頑張ります」とか言っていることがものすごくあやふやで明確化されていないので結果を出そうとしてもちょっと厳しいです。本当に目標に辿り着く人というのは達成までのプロセスを設定し、小さなことを大事にやっていく。そういう選手ほど得る結果は大きくなります。スポーツの世界では、これさえやっておけばいいという一発逆転はありません。目標を設定して、道筋を逆算し、足りないものや必要なものを埋めていくのが練習、トレーニングなんです。 |
T1 park 記者
熊本の学生に向かってエールを。 宮部先生 何事にもチャレンジする気持ちを持ってほしいです。やる前から諦めず、なんでもいいから一生懸命取り組む。結果はやればついてきます。例え出ないにしてもチャレンジした過程が大事。それこそが財産なんです。それから自分の努力だけでは物事は成り立たないものです。関わってくれる人の温もりや感謝の気持ちに気づく、そういう心の器を作ってほしいですね。 今の子は羨ましいですよ。色んな事が便利化されてスポーツの世界でも自分がどう泳いだかというのを撮影して確認できるようになっています。科学が発達する、食べ物がよくなる、明らかに時代とともにレベルアップできる環境になりつつあります。一方でモノにヒトが追いついていないという指摘もありますが、私は時代のいいものを先取りしながらそれに見合うような能力を身に付けるべきだと思っています。過去にこだわっていたらダメ。成長しないです。スポーツは過去の自分を乗り越えないと次のステップに行けません。自分が進化しようと思ったら過去を越えていくことです。やるべきことをやったら結果は神のみぞ知る。あとは子供達を信じるだけです。 |