就職率に部活動 進学も順調に伸びている ―熊本国府高校の近況を教えて下さい。 福田 まずは私立の学校ですから、自分たちで何か特色を打ち出していかなくてはならない、というのがあります。その意味で言いますと伝統的な特色として、熊本女子商業高校を前身とする流れから、まず就職率が高いということ。近年でもほぼ100%と非常に高い実績を誇ります。ことに他校と比較した場合、公務員試験の合格者が多くますます伸びており、公務に就く卒業生の数は県下トップレベルにあると自負しています。次に部活動の強さ、盛んさ。先日、九州大会への出場を決めた野球部をはじめサッカー、ハンドボール男女、女子バスケット、陸上など強豪と言えるクラブが多くあります。 |
そして近年著しい特色と言えるのが、進学の実績です。九大・熊大など国公立、また防衛大学、そして私立も早稲田・上智など、難関大を含め様々な学校へ進学する生徒が多くなりました。商業高校だった頃を知る年代の方からは、驚かれる時もありますね。これもひとえに生徒たち、そして当校教員の皆さんが一体となって頑張ってくれている、そのおかげと誇りに思っております。他校さんでは一部教育を予備校に委託しているところもあるのですが、当校は全て自前でやっていますから。何時間も勉強するのはもちろん、モチベーション維持の管理など、本当によくやってくれていると感謝しています。
普遍的なものを維持し 進化させていきたい ―今後、力を入れていきたいことは。 福田 手前味噌ではありますが、現在、当校は良い流れにあると思っています。ですから、何か全く新しいことにチャレンジするというよりも、この流れをより良くしていきたいと思っているところです。 たとえば先に挙げた進学実績ですが、2020年から大学受験の形式、さらに2022年からは高校の学習指導要領(文部科学省が告示する、初等教育・中等教育における教育課程の基準)が変わります。こういったことに備える意味でも、当校教員たちは皆さん、教育関係の企業や県が主催する研修会に出たりして、よく勉強してくれています。おかげで、今後も順調に実績を伸ばしていけるはずと思っています。 |
20歳ごろの冬、熊大生時代の一枚。 | 辛かった農作業 おかげで今の自分がある ―学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。 福田 私は八代の農家の長男でして、本来ならそれを継ぐ人間でした。しかし特に中高生の頃、朝4時から夜9時までイグサ(畳表の材料として知られる植物)栽培の手伝いをするのですがそれがもう、本当に辛くてですね。学校がある時でも作業をして登校、帰るとまた作業という毎日です。おまけに真冬に植えて真夏に刈り取るので、やたら寒いし暑いしと、今でも思い出すほどです。 だから大学進学を名目に、ある意味で家業から逃げたとも言えるんですが、その後教師の道へ進んでからもやはり、大変なことはいろいろとありました。校長になった今も同様ですね。しかしあの頃の農作業に比べたら、そうでもないと言いますか…(笑)。当時の辛い日々のおかげで現在の自分があるんだなと今、思い至ります。 |
答えを出したがる
―若者へメッセージをお願いします。
福田 生まれた時から情報過多な環境ですから、それを扱う技術は非常に長けていますよね。私には2歳の孫がいるんですが、もうタブレットで遊んでいてびっくりします(笑)。
一方、検索などに慣れ過ぎているせいか「すぐに答えを出したがる」傾向があると思います。でも現実社会というものは、自分の欲しい答えが簡単に出るものではありませんよね。ですからもう少し我慢して、時間をかけてじっくり考える、そういう経験も積んで欲しい。それにより初めて見えてくるもの、初めて得られる大切なものが多々あるはずです。
当校の建学の精神は、かいつまんで言えば「調和の取れた、真に役立つ人材を育成する」というもの。今の若者が「我慢すること」も身につければ、まさに調和の取れた、世に役立つ人材になれるのではと思っています。