―熊本西高校柔道部の近況は。
令和5年度全国高等学校柔道選手権大会県予選で優勝(3大会連続)、令和6年度県高校総体の団体戦で優勝(6大会連続)することができました。3年生が抜けて新チームとなってからは、昨年10月の県下高校大会団体戦で優勝、九州高校新人柔道大会はベスト8でした。現在、部員は15名(3年生8名、2年生5名、1年生2名)です。週6日、校内の柔道場で活動しています。
―今後、力を入れていきたいことは。
九州大会は実力で大きく相手に劣っていたわけではなく、もう少し積極的な試合ができていれば結果は変えられたと思います。一番の課題はメンタル面です。本校柔道部は“攻めの柔道”を目指しており、そのためには、まず手を出すことが第一。だからこそ、普段から何でも「率先してやることが大事」と生徒たちには伝えています。
その一環として、練習メニューは生徒たちに話し合って決めてもらっています。筋力トレーニング・寝技・立ち技の3本柱をまんべんなくやることだけは決まり事としていますが、それ以外は自由。まず試合や大会での反省点を部員みんなで話し合い、改善につながる練習メニューを考えていきます。それを1週間、2週間、3週間、1カ月と続けながら、その都度、成果をみんなで確認し、まだ練習する必要があれば継続し、足りなければ改善したり新たな要素を付け加えたりします。つまり、練習が自分たちに合っているのか、成果が出ているのかを生徒たち自身にチェックしてもらい、さらに対策を立てていくのです。このような練習を通して積極性や「自分でやる」という習慣が身についていくと考えています。
それから、他者に敬意を払える器の大きな人間になってほしいとも思います。柔道は試合を始める時に互いに礼をしますが、これには「これから私のポテンシャルを最大限に引き出してくれる相手へ敬意を払う」という意味があると私は考えています。自分自身の強さだけを求めるのではなく、外部にもきちんと心が向いている、そんな器の大きな人間になってほしいですね。
学生時代の学びが指導の原点に
―学生時代の、今に活きる「学び」を教えてください。
大きく二つあります。一つは、努力すれば目標を達成できることを、実体験を通じて学びました。というのも、私は小学校3年から柔道を始めましたが、小学校・中学校の頃は目立つ存在ではありませんでした。しかし、高校に進学して原口先生から努力を積み重ねることの大切さと、努力することを当たり前のこととして日常生活に取り入れることが重要であることを教えていただき、3年時にインターハイ個人戦で優勝することができました。
努力すれば、いつか目標を達成できると思います。ただし、努力を当たり前にさらりとこなせるようになるまでやりこんでいくことが大事です。「頑張っている」と自分で言っているうちはまだまだ。努力を当たり前にしないといけないと生徒たちには伝えています。
もう一つは、私の大学時代の恩師・山下泰裕先生から学ばせていただいたことです。たくさんのことを教えていただきましたが、特に印象に残っているのが「柔道を通じて自分の人格を形成することも大事だが、人に影響を与えられるような生き方や接し方をすることも大切」という教えです。競技では競い合う気持ちが大事ですが、畳を降りたら、誰とでも門戸を広げて交流するなど人間としての付き合いを大事にしなさいと教えていただきました。先ほど話しました「生徒たちに器の大きな人間になってほしいと」いうことも、山下先生の教えが源にあります。私は学生時代に、本当に素晴らしい恩師に恵まれました。
―座右の銘は。
部のスローガンである「力必達」です。これは「努力すれば必ず達成できる」という意味で、嘉納治五郎先生(講道館柔道の創始者)が書かれた書物の中にある言葉です。
高校インターハイ優勝時の一枚
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夢は簡単に諦めず長い目で取り組もう! ―若者へメッセージをお願いします。 私は教員になって27年、その間、うまくいかないことはたくさんありました。皆さんにも、うまくいかなかったり、夢を諦めたくなったりした時があると思います。でも、その時にすぐやめることを選択するのではなく、一旦休んだり、見方を変えてみたり、方向性を変えてみたりしてみてください。自分で「やりたい!」と思ったことは、思い続けることでいつか近づけるはず。簡単に投げ出したり逃げ出したりせず、長い目で見てほしいと思います。 私は教員になった当初から、日本一を目指してくれるような生徒、世界の舞台で活躍できるような生徒の指導に携わりたいとずっと思ってきました。最初はなかなか思うように行き |
夢を夢で終わらせず、夢が目標になるところまで頑張ってみてください。そして、疲れたら一旦休むという選択も良いと思います。私も大学で競技を引退し、その時に挫折感を味わいましたが、柔道が好きなので、自然と再び近づいて行きました。皆さんも好きなことであれば、休憩した後でも、きっと目指す方向へ近づいて行けるのではないかと思います。
※インタビュー/2024年12月18日取材