― 熊本工業専門学校の近況は。
本校は1983年に創立して、42年目になります。来年度から電気システム科と機械システム科の募集を停止し、新たに半導体機械工学科(4月に半導体工学科に改名)を開設します。さらに、日本人と留学生クラスを分けたクラス編成にします。
県内の専門学校で、半導体に特化した学科開設は初めてです。TSMCの熊本進出に伴い、毎年九州で1000人規模の人材が不足すると言われています。本校でも時代に合わせて変革しながら地域産業に貢献していきたいと考えています。
― 現在力を入れていることは。
今年11月に台湾の明新科技大学と連携協定を締結します。これにより半導体教育を一層充実させていきます。留学前から中国語の事前研修制度もあり、明新科技大では2年間で学士を取得でき、そのうち1年間は有給インターンシップがあります。正社員と同じ給料をもらいながら実務経験を交え、半導体の専門技術を身に付けることができます。より多くの学生にこの留学制度を活用してもらい、未来のエンジニア育成を進めていきます。
また今後、日本語科への留学生も増やしていきたいと考えています。その根底には、やはり日本における人材不足があります。熊本県の留学生数は他県に比べて少ない状況です。本校では現在、ネパールを中心に165人の留学生が学んでいます。一昨年はコロナ禍の影響で入国できず留学生が減少しましたが、現在の1年生はその反動で大幅に増えました。今後も国際交流を推進し、豊かな人間性とクリエイティブな人材育成を目指していきます。
技術を身に付け、未来を切り拓く
― 学生生活で、学んで欲しいことは。 技術を身に付けて、自分の未来を自分で切り拓いていきなさいと言っています。可能性は無限にあります。一生懸命に今を頑張れば後で必ず道は拓けてきます。 私は長年、工業高校で教えてきました。常にそれぞれの分野で国家資格を取得して自分の人生の道を拓くように生徒たちを応援してきました。 やはり、一つのことに集中して、それがもし形にならない場合でも、頑張ったことは絶対にいつか自分に返ってくるだろうと思います。失敗したままで終われば、それは失敗ですが、成功するまで頑張れば、それは成功になります。学生時代には何でもチャレンジすれば、失敗しても人生のなかで、いつか良い方に結果が出てくると思います。 |
「会社では給料の3倍を稼げ」
― 学生時代・若い頃の、今に活きる「学び」を教えてください。
学生時代は、北海道や全国各地を旅して回りました。行先で泊まるところがなく困っていると、地元の民家に泊めてもらうなど、良くしてもらいました。旅先で多くの人と出会い、視野を広げることができました。
今に活きる「学び」は、学生時代というよりも、大学卒業後、教員になる前の会社勤めで鍛えられました。入社して最初に言われたことを今でも覚えています。それは、「会社に入って、あたたちは給料をもらいます。そのためには、あなたたちが利益を稼がなくてはいけません。だから自分の給料の3倍の利益を上げなさい」と言われました。「まず1つ目は自分の給料分、そして2つ目は会社を支える総務といった間接部門の人たちの分、それから3つ目は株主の分。3倍の利益を出して、会社にいる意味があるんですよ」と言われました。入社してすぐの若い頃にそれを教わり、世の中の厳しさを学びました。会社にいるときは、工場や全国の現場でとても勉強になりました。
会社に5年勤めていたからこそ、工業高校の教員になってからも生徒たちに、働くことの大切さ、会社というものの考え方について色々な話ができたと思います。もし大学卒業後そのまま教員になっていたら気付かなかったことがたくさんあったと思います。本で読むことも大切ですが、実際に自分で現場に入って経験することが一番役立つのだと思いました。
為せば成る
― 若者へメッセージをお願いします。
自らの人生は自らの手で切り拓いてください。そして、変化を恐れず柔軟な心を持つことです。私自身、大学卒業後に一度は会社に勤めて、教員になりました。自分で色々考えて、自分の想いを持って自分の道を切り拓いてきました。これは、自分で判断して行ったことは自分で責任を持たなければいけないということでもあります。
最終的に自分で判断し、自分で責任を持つことが大切です。そうすれば行き詰った時に頑張りが効きます。他人から言われて道を選ぶのでは、挫折してしまい、目標には到達できません。日頃から言われたことだけをするのではなく、自分の道を拓くためにも、まずは自分で考えて行動してください。
※インタビュー/2024年9月25日取材