【プロフィール】
1952(昭和27)年生まれ、68歳。兵庫県出身。 大阪大学薬学部-同大学大学院薬学研究科博士課程修了(薬学博士)。 1986年同大学薬学部助手。1989年8月より1年間、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。その後、大阪大学薬学部助教授を経て2001年より熊本大学大学院薬学研究科、医学薬学研究部、生命科学研究部の教授を務める。2013年4月より4年間、同大学副学長(男女共同参画担当)。2018年3月同大学定年退職、同年4月同大学名誉教授。 2020年4月尚絅大学 尚絅大学短期大学部学長に就任。2006年10月から2020年9月まで日本学術会議連携会員も務める。専門は構造生物学、蛋白質科学。
若者へのメッセージ
成果がすぐ見えなくても「続けること」が大切
大学7号館の建設で、
グローバル教育や中高大連携を推進 |
―尚絅大学・尚絅大学短期大学部の近況を教えて下さい。
2021年2月、九品寺キャンパス(短期大学部を含む同大学は、武蔵ヶ丘キャンパスとの2キャンパスから成る)に大学7号館が完成予定で、現在、武蔵が丘キャンパスにある現代文化学部がそこに移転します。5階建てとなる校舎の1階には学内国際交流の場となる『グローバルラウンジ』が設置され、2020年2月に設置した『グローバル化推進センター』もそこに移転することになります。 本学にはその教育や研究を地域社会に還元すると共に、学生の皆さんの「学びの深化」を支援する組織として、多くのセンターが設置されています。その中でも国際化を推進するのが『グローバル化推進センター』。これまでも積極的な国際交流を行ってきましたが、当センターはその一層の充実に加え、資格取得や語学の学修支援に至るまで皆さんの要望に耳を傾け、それを具体的に提供する中心的な機能を担うものです。 |
なお大学7号館の1~2階は、本学や尚絅中学・高等学校の学生・生徒、教職員の交流の場としても活用され、より一層の中高大連携の推進も図るつもりです。
教育を実現していく
本年9月16日、熊本県と協定を結び『くまモン学』という新たな学問の分野と方法を構築することとなりました。今や世界的キャラクターとなった『くまモン』の活躍・成果を調査・研究し、より一層のブランド価値向上に寄与する。さらに、そのノウハウを活かして県内の新たな魅力づくりや、誇りを持てる地域の創造、人材育成などへつなげようというものです。本年度は現代文化学部を中心に実施していますが、次年度からは全学的に取り組む計画で、まさにこれからというプロジェクトになります。
また、現在短期大学部に「幼児教育学科」がありますが、加えて大学に同分野の4年制学部設置を計画しています。世界的にも幼児教育の分野は4年制で学ぶのがスタンダードですし、遅れていた日本でも4年制学部が増えており、より高度な専門性と実践力を備えた幼児教育者の育成が求められています。
さらに「生活科学部」や「食物栄養学科」と相互連携し、本学の強みである「食」「子育て」の双方を通して、より深い学びを得て欲しいですね。こちらはすでに、合同研究会を実施するなど進行中です。
このように現在、いろんな分野でより高度な、かつ融合的な教育・研究が必要とされています。ですから本学も、その現状に相応しい環境整備を進めているところです。
力を身につけて欲しい
ひとつ言うなら、「課題を自分で解決できる力」。これは日本全体における、全ての学校教育段階の課題と指摘されています。
ICT、AIと万能のような技術が普及しても、人間にしかできないこと、人間だから直面する問題というのは、やはり無くならないと思うんですね。ただ、そういう問題に対処するには意外と、基本的な教養も必要だと思っています。基本的な知識がないと、問題を解決するきっかけも持てないのではないかと。
大阪大学薬学部入学直後、同じ寮の友人から、「化学の女性の先生が、産後すぐに子供を保育所に預け、講師として働き続けている」ということを聞いたんですね。
当時の女性は、まだ「出産・育児を機に退職する」のが普通でしたから、良い意味でのショックを受けました。女性でもそういう働き方ができるんだ、そういう生き方もあるんだ…と。それから私は薬学の研究者となり研究を続け、また学内外で委員などの要請があれば、基本的には引き受けました。そして今この女子大で、初の女性学長に就任させていただきました。
自分だけでなく女性全体が少しでも働きやすい社会になる、そのための力になれたらと、そんな気持ちがあったかなと思います。そうした道を歩む上で、大学時代のその出来事は、背中を押してくれたと感じますね。
成長する上で大切
「継続は力なり」。これは座右の銘と言って良いのか…学生さんたちから、私がよく口にしていると指摘された言葉です(笑)。
思えば特に自信があったわけでもなく、研究者になった私です。それに薬学の中でも私の研究分野は、すぐに成果が出るような分野でもないですし、これがいつ、どう役に立つのかわからないけど、とにかく研究を続ける。特に女性が続けるのは大変ですが、それでも続ける。そしたら何年も何十年も後に、たとえば何か画期的な薬の開発に役立ったりすることもあるわけです。
だからとにかく継続することが大切、それに尽きるのかなと。これは女性の社会進出にも、同じことが言えると思います。先人が始めた女性が働き続けやすい環境作りを、いろんな人でつなぎながら、続けてきたことで今がある。そしてこの先も継続していくことで、未来があるのだと。