今年4月に半導体技術科を新設、熊本大学工学部への編入も可能に
― 熊本県立技術短期大学校(技大)の近況は。
今年4月に半導体技術科を新設しました。TSMCの熊本進出発表から約2年半の間、新学科開設に動いてきました。
新たな半導体技術科では、半導体製造プロセスの前工程から後工程まで、全体を広く俯瞰できるカリキュラムを備え、半導体製造と半導体製造装置に関する技能・技術の修得を目指します。技大では創立以来2千人以上の卒業生を輩出してきました。その約3分の1が半導体関連企業に就職しています。
さらに、熊本大学工学部への編入が可能になり、既に1人が編入しています。4年制大学への進学ができるようになり、進路の選択肢が増えました。
今年から、入学式の後すぐに、3日間の集中講義「ものづくり入門」を開始しました。全学科の新入生が学科の枠を超えて4名程度の25グループに分かれ、グループ内でお互いにコミュニケーションを取り合いながらものづくりの楽しさを味わってもらうことを目的としています。1年生前期では、基礎力を重視した教育を進め、後期から専門学科に分かれて学びを深めていきます。
地学一体で魅力ある大学へ
― 現在力を入れていることは。
現在、入学生の大半が熊本県内からです。今後は、県境・国境を越えて様々な学生に集まってもらい、グローバルな環境の中で学生同士が切磋琢磨してもらえるようになればと考えています。
技大の基本理念には、熊本県産業の高度化、高付加価値化に対応できる高度な技能と知識を兼ね備えた実践技術者を育成し、熊本県産業の経済発展に寄与することを掲げています。これを実現するために、学内だけではなく、学外の地元企業さんから技術者や社員の方を教員・講師として派遣していただいており、学内にいながら産業界の最先端の話を聴くことができます。
技大では、このような「地学一体」の取り組みを「技大未来構想 グランドデザイン2040」と位置付け、地元産業が求め
る未来の人材を育成しています。これからも地域社会に貢献できる大学を目指していきます。
また、分業化が進むものづくりの時代において、自分の担当部署だけではなく、全体の流れを把握できる広い視野を持っておくことが今後より一層必要になってきます。そのためにも学生生活を通じてコミュニケーション力を磨いてもらいたいと思います。
人との出会いが、新しい考えにつながる
― 学生時代の、今に活きる「学び」を教えてください。
やはり、人との出会いが大きかったと思います。学生時代、白川のほとりの民家の2階で下宿生活を送っていました。そこで医学部や理学部の学生と生活を共にし、夜になれば酒を飲みながら語り合っていました。また、サークルなどを通して他大学の学生とも一緒になって楽しんでいました。それがコミュニケーション力となり、ネットワークづくりになっていたと思います。
学生時代の出会いが、社会に出てからも再会し、そこから新たな出会いや情報につながり、今に活きていると思います。そうした人とのネットワークのお陰で、色々な情報をもらうことができ、新しいことを考えたり、発見したりすることができると思います。
大学時代の研究熱心な指導教員との出会いもまた人生において大きな影響を与えてくれました。その先生は麻雀も大好きで、メンバーが足りないときにはよく呼び出されていました。ご自宅にもお邪魔してご馳走になったことも度々あります。その先生の薦めで、大学教員となり、今があると思っています。
自分の考えを持て!
― 座右の銘は。
「正直に、腹を立てずに、撓(たわ)まず励め」という第42代総理大臣・鈴木貫太郎氏の言葉です。終戦の時の総理大臣です。
若い頃から自分の思ったことは常にストレートに言ってきました。ある時に、「教授になったのだから、もう少しわきまえて発言したほうが将来のためだ」と言われたこともありました。しかし、自分の考え方を曲げるのは納得いかなかったんです。自分の信念に対しては常に、どこにいようが正直でありたいと思い、今もその考えを貫いています。
学生時代の様子。白川のほとり、民家2階での下宿生活の様子。家賃は6000円、風呂は銭湯だった。
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― 若者へメッセージをお願いします。 「知識は武器」という言葉を贈りたいと思います。例えば、ディベートを行うときには、あらかじめテーマについて調べ、しっかりと準備することが必要です。これを行わないでテーマに関する知識がないままディベートに向かうと、自分の意見を述べることや相手の意見に対応もできず、十分なコミュニケーションが取れないままディベートが不消化で終わってしまいます。このように、知識はコミュニケーションを行う上での重要なツール(武器)なのです。様々なことに興味を持って深く学び、熟考することで知識を積み重ねてください。これはコミュニケーション力の強化につながります。 今の時代、PCやスマホのような情報端末で検索すれば知識が無くても何でも簡単に知ることができます。しかし、その瞬間は頭に入ってきますが、それを消してしまったとたんに頭の中からも消えてしまいます。自分の頭の中に知識として保存しておくことで、武器となります。情報端末に頼らず、自分で考えて嚙み砕いて自分の知識にしてください。 |