【プロフィール】
1962(昭和37)年4月27日生まれ、53歳。熊本市出身。東海第二(現・東海大学付属熊本星翔)高校―九州東海(現・東海)大学工学部卒。学生時代より九州代表として全国大会に参戦。県内のアマチュア大会はすべてタイトル獲得しており、九州学生選手権(大学)で優勝するなど全国でもベスト10入りの常連に名を連ねる。昨年まで国体熊本代表。大学卒業から3年後大学からのオファーを受けゴルフ部監督就任、以来20数年に渡り後進の育成にあたる。全日本大学対抗戦3位(団体)、個人優勝へ導くなど有数の強豪校へと育てる。嘉数光倫プロ、青山香織プロなど男女24人のプロゴルファーを輩出している。
若者へのメッセージ
「習慣力を磨け」
T1park記者
全日本大学対抗戦14年連続出場など実績を重ねられています。東海大学ゴルフ部の近況を教えて下さい。 堀田 現在の部員は4年生2人、3年生5人、2年生3人、1年生7人の計17人です。普段は週2回ゴルフ練習場(打ちっ放し)で練習。それから熊本空港カントリークラブなど提携コースが8コースありますのでシーズン中であれば週に5ラウンド回らせてもらっています。目標は団体戦での日本一。これをなんとしても達成したいという気持ちで頑張っています。東海大学を出てプロになった子たちは必然的に専任コーチとなり、ボランティアで指導に来てくれています。東海ゴルフ部総力で日本一を達成し、OBも含め皆で祝賀旅行に行きたいですね。 T1park記者 東海大学ゴルフ部の強さの秘密は。 堀田 14年前の全日本大学対抗戦に出場した際、たまたま成績が良く日米大学対抗戦に出る機会が得ることができました。そこでは毎日監督会議があり、アメリカのスタンフォード大学の監督と話している時に「強くなるために一番必要なものは何か」と質問したところ、「1番目は環境、2番目は選手の資質、そして3番目に指導だ」と言われたのです。当時東海大学には最も重要な「環境」が整っていませんでした。ですからまずその環境を整えようと1コース1コース趣旨を説明し、協力をお願いして回りました。今はおそらく日本一の環境だと自負しています。そして、2番目に「選手の資質」も大事ということでスカウト活動を始めました。3番目の「指導」ですが、当時私は坂田信弘プロの主宰する坂田塾でヘッドコーチを務めており指導方法を勉強しました。そこで培った指導法が今につながっています。 T1park記者 堀田流練習の特徴は。 堀田 他校と決定的に違うのが「飛ばす」練習をするということ。大学4年間のうちに320ヤード飛ばすことを目標としています。他の大学であればコースマネジメントやスイングチェック、ショートゲームなどの練習がメインにされていると思いますが、私は2時間の練習時間があれば2時間飛ばす練習に集中します。時間があるだけ素振り、筋力および体幹の強化に力を注いでいます。 本来ゴルフのマネジメントの観点から言えば飛距離の重要度は20%程度の割合になると思いますが、私が飛距離を重視しているのには理由があります。全日本大学対抗戦で九州の選手は全く活躍できていないという現状があり、その要因は関東の選手との圧倒的な飛距離の差にあると考えているからです。1番ホールの第1打で30ヤードから50ヤード差をつけられてしまう。それを目の当たりにすると九州の選手はどんなに上手くてもすくみあがってしまってゴルフになりません。ここをどうにか克服しようと飛ばす練習だけに集中することにしたのですが、飛距離が伸びるにつれ順位も徐々に上がり始めました。そして一気に4位、そして3位と上がり、近年は少し落ち込んでいたのですが、おそらく来年からまた10位以内に入っていけるのではないかとみています。 T1park記者 監督の方向性がシンプルですね。 堀田 選手もその方が分かりやすいのではないでしょうか。大学では飛ばす練習を、個人ではショートゲームの練習をしましょうというのが大体の流れですね。ショートゲームは個人でも結構練習できるのですが飛ばす練習はそうはいかない。疲労は溜まるし、手にマメはできるしでしんどいんですよ。しかし、きつい練習でも皆でやれば意外とクリアしていけるもの。仲間同士で励まし合うこともできるし、私も罵声を飛ばす位の勢いでハッパをかけますしね。本当にこれは紳士のスポーツなのかと思うくらいある意味で精神的格闘技ですよ。 T1park記者 ゴルフは記録競技なので自分との戦いでもあると思います。メンタルを鍛えるためにやっていることは。 堀田 指導を続けてきた中で気づいた事を自分なりにまとめて皆に配ったり、言葉で伝えたりしています。ハードな練習を笑顔でこなすくらいの精神力を持たなければプレッシャーに潰されてしまいます。特に全国に行って強豪校との組み合わせになった時ビビってしまったらその時点で負け。まずは監督が普段通りにしていることが大切です。監督の顔色で選手の顔色も変わりますからね。私はよく叱りますし練習もハードにやっていますが、選手にはきつい時にきついと言わせないようにしています。きついものをきついと言わず我慢する力こそが精神力なのだと考えています。 T1park記者 選手への伝え方、育て方のコツは。 堀田 私は褒めて育てるということはしていません。3回叱って1回褒めるという感じです。杭をイメージすると基本的には上から叩いて、ここぞという時に下からグッと押し上げてあげる。選手が伸びるのはこの時です。ここで重要なのは子供ひとりひとりをしっかりと見ていること。子供によって2回につき1回なのか、4回につき1回の割合なのかを見極める。そこを見誤るとモチベーション低下を招いてしまう。これは普段から子供の様子をしっかり見ていないとできません。 そして試合ではプレッシャーがワクワクになるよう気持ちを持っていっていますね。たとえば、団体戦は5人で戦うのですが強い大学の選手と自分たちのスコアを比べさせます。それぞれのベストスコアを聞き、比較させるとそこに差はないことに気づく。そして「なんだ、お前たち変わらないじゃないか。ちょっと頑張れば勝てるじゃないか 」という言葉をかける。実際変わらないですもん。少しだけ相手の方が自信を持っているというだけですね。うちは5回ラウンドすれば3回良いスコアで回れることができ、相手は5回のうち4回良いスコアを出すことができる。 大学生といっても子供なんですよ。怒ったらシュンとなるし、褒めれば調子に乗る。ですから中学生や小学生を相手にするのと同じような感覚で接しています。試合の1カ月前はシュンとさせて、1週間前あたりから調子を上げさせていくといった感じですね。 T1park記者 気持ちの波をコントロールしていらっしゃるということですね。 堀田 そう、これが難しいんですよ。自信と慢心は紙一重です。自分に強く、自分に厳しく、自分に自信を持ちなさいといつも言っているんですけども、自信は中々持てないものです。プレッシャーも我々でさえどう克服していいか分からないくらいありますからとにかく試合前はワクワクして臨んでくれと。団体戦であれば尚更ですね。個人は負けても次頑張ろうで切り替えられますが、団体になると自分の成績がチームの成績に影響しますからプレッシャーはかかって当然。試合でよく言うのはパターでショートするなということ。3回に1回まぐれで入ればいいから強気でいけと。気持ちの部分で引いては駄目なのです。 T1park記者 本番で心を落ち着かせるためにやっていることは。 堀田 調整方法は工夫していますね。心に余裕を持たせるようにしています。試合は長いので期間中ずっと100%を維持することはできません。ですから初日は70でいい、最終日の最終ホールで100になりなさいと言っています。 すべてに共通することと思いますが「習慣力」って大事だと思うのです。そしてそれは普段の生活の中で身につける必要があると考えています。たとえば食事をする時猫背で食べている子はゴルフの試合でも構えが曲がってくるもの。ということはボールも曲がるし、身体も痛めてしまう。3日間の試合なんて到底持ちません。姿勢が悪い子は順位も上がってこない。綺麗な姿勢を身につけている子は修正点とその方法が分かりますが、姿勢が悪い子は軸がないからどんどん崩れていく。試合で習慣力が見えないチカラとなって現れてきます。普段の生活が試合に影響してくるということです。 子供たちには奇跡は必ずあると言っています。200メートルも先にゴルフボールを打って小さな穴入ってしまうことがあるのですから、そんなの狙ってできるものではないし奇跡でしかないですよ。ただ普段から正しい姿勢でいることによって、試合で「正しく構え、正しく打つ」ことが継続できるようになる。そうすると奇跡が起きる可能性も必然的に増えてくるのです。言わば奇跡は起こるべくして起こっているとも言える。奇跡が起きる人というのは普段の生活がきちんとしている。うちのチームと他の大学との違いはゴルフの奇跡が多いというだけだと思います。 部活動はもちろん、仕事をしている方たちも「習慣力」は見えないチカラになると思います。良い習慣を持っていることによって仕事が上手くいったり、職場の人間関係が円滑になったりする。子供たちの中にはプロになっていく子もいますがほとんどは社会人になるので、社会に出た時に可愛がってもらえるような人間になってほしいと常々思っています。 どの監督さんも言われることだと思いますが、監督の言葉って選手の人生を変える力があると思っています。監督のしょうもない一言で選手生命が脅かされることだってあり得る。特にゴルフの場合、構えの位置を少し変えるだけでゴルフができなくなる、いわゆるイップスにかかってしまうことがある。ですから子供を指導するにあたって言葉は非常に慎重に選んでいます。子供にとってみれば我々の言葉は100%ですから中途半端なことはできません。いつもその子の人生を背負っている位の気持ちで接しています。場合によっては子供が人生の迷子となってしまうケースも考えられますから私は120%の言葉しか使いません。90%の言葉なんて使えませんよ。 T1park記者 若者へ応援メッセージをお願いします。 堀田 言葉の意味をよく知り、「自分の言葉」というものを持ってほしいですね。そうすることで人間の成長につながると考えています。私が大切にしている言葉のひとつに「感謝」があります。 実は私、学生の頃悪くてですね、してはいけないことや人に迷惑をかけることもありました。とても指導をするような生活をしていた人間ではなかったのですが、ゴルフと出会いすべてが変わりました。ゴルフのおかげで今の私があると思っています。私が指導の道に入った一番の理由はそういうろくでもない人間を元に戻してくれたゴルフに対して、そしてこの私を熊本県代表として輩出してくれた熊本県に対して、それぞれに感謝の気持ちが強く、どうやって恩返ししようかと考え、ゴルフの監督をすることによって多少なりとも熊本に話題ができ、熊本の活性化につながればいいなという思いが強かったからです。 毎年、1年最後の練習が終わると生徒に手紙を書かせます。両親と学校、提携している練習場の方々に感謝の気持ちと来年の抱負を言葉にさせる。感謝の謝の字を見てみると、「言」つまり言葉、「身」は行動、お金を指す「寸」で構成されています。言葉で感謝を伝え、行動で感謝を示し、お金で感謝の気持ちを渡すということですね。学生はお金はないので言葉と行動で感謝の気持ちを表すようにしています。 T1park記者 言葉を大事にするきっかけはなんですか。 堀田 私自身が言葉で失敗していたからです。子供に対する言葉、保護者に対する言葉、学校に対する言葉。また本を読むようになり、自分が言葉の意味を履き違えて覚えていることに気がつきました。これじゃだめだなぁと思いました。日本人として、言葉を使う人間として失格だなぁと。そこでゼロからのスタートで学生に対する基本的な教えを言葉にしてまとめるようになりました。素人がまとめた言葉なので足りない部分も多々あるかと思いますがチームの指針となっていると思います。 言葉は自分に勇気を持たせてくれます。監督は皆不安だらけで、怖くて、優柔不断なところがあって、悩みがある。これは強いところの監督ほど持っていると思います。実際に顔や口に出しているかは別問題ですが、その時に自分の言葉を持っていれば決断することができるようになる。たとえば選手の選抜で悩んだ時、私であれば「習慣力が力なり」という言葉を頭に入れているのであれば、こちらの選手の方が生活習慣がいいから彼にしよう、とかね。このようにして自分が大切にしている言葉ですべての事が判断できるようになる。監督人生の集大成が言葉になっているはずですから、監督の色というのも言葉に現れ、チームの原動力となっていると思います。その舵切りがチーム力となって積み上がっていると考えています。 子供たちにも「自分の言葉」をひとつでいいから持つように言っています。人生においても悩む場面は多々あると思うが、たとえつまづいてもまた笑顔で立ち上がらないといけない。その時には自分の言葉が勇気をもたらしてくれるし、人生のアクセルになってくれると思います。 T1park記者 ありがとうございました。 |
1 コメント
エビス
10/5/2019 06:18:10 am
ゴルフ部の益々のご活躍を期待しています。
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