1951(昭和26)年7月19日生まれ、64歳。熊本市出身。熊本商業高校卒。公益社団法人全日本きものコンサルタント協会認定校装道礼法きもの学院教授科卒。93年分院取得および通信教育面接指導講師取得。95年礼法指導講師認定。96年より熊本市立(現・必由館)高校「和服着装と礼法」非常勤講師。2003年文化庁委嘱事業「伝統文化こども教室」熊本市実行委員会代表。05年尚絅高校「和装礼法同好会」発足、海外文化使節団としてアメリカ・カナダにて100名規模できものパレードおよびきものショー参加。06年尚絅大学短期大学部後期授業「社会人マナー論」。07年より尚絅中学校「装道」科目非常勤講師。08年より尚絅高校「礼法」科目非常勤講師。10年公益社団法人全日本きものコンサルタント協会熊本県会員代表。12年より熊本県文化懇話会「和装文化」代表世話人。好きな言葉は「小才は縁に出会って縁に気づかず、中才は縁に気づいて縁を生かさず、大才は袖ふれあう縁をも生かす」
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和装と洋装の違いという観点からお話ししますと、洋装は多くのデザイン、流行によりファッションの多様性があります。着る人の体型の長所短所を考慮されたつくりになっており、アクセサリーで服装をより華やかにするなど表面のアピールをするものと私は考えています。
一方、和装は子供からお年寄りまでデザインは変わりません。個性を好む現代において面白みに欠けるように感じられることもありますが、個々の内面にある心の在り方が着る時の所作や着こなしの中でデザインとして完成されます。つまり、見た目は静かなのですが中身には多様な「動」が存在し、その人の心の方向性や美意識を読み取ることのできる、世界に誇れる日本の民族衣装なのです。
T1park記者 江本先生の考える「美しさ」とは。 江本 美しいという漢字は分解すると羊に大と書きます。羊は古来より生け贄の象徴とされているそうですが、人の役に立ちたい、人に喜んでもらいたい、という奉仕の心が大きい人ほど美しいということですね。それに加えて私が考えるのは、その瞬間に出会うさまざまな事柄に一生懸命に向き合うこと。失敗しようがしまいが心を込めて向き合う。その過程が美しさなのではないかと思います。そうやって自分を高めていく中で色んな人達を包み込み、温もりのある和づくりができる、あるいは人の痛みが分かる、そうした精神こそ美しさにつながるのではないでしょうか。 「襟を正す」「折り目正しく」どちらもきものの用語から生まれた |
T1park記者 内面の美の磨き方について教えてください。なにか家庭で簡単に始められることはありますか。 江本 物事がうまくいかなかったり疲れていたりする時は部屋の掃除や模様替えをすることで心を整えることは有効です。 また、寝る前に美を磨く方法として鏡法というものがあります。鏡は魂を映しとるものと言われますが、寝る前に鏡を見て自分の心と語らう。人間は他人と会話することはあっても自分自身と対話することは少ないものです。今日1日どうだったか自分と語らい、良いこと悪いことを足し算引き算して少しでもプラスになれば明日の階段は上がる。そして必ず口角を上げてニッコリと笑い、今日も無事にご飯が食べられ、布団に入ることができて自分はな |
江本 時代背景が異なるので一概には言えませんし、皆それぞれに一生懸命頑張っていると思います。ただ昔と違うと感じている点としては、大事なものを学ぶ環境がなくなっていることが挙げられます。そうした背景があるから、物事を知らないし、表現もできないのだと考えます。
現代は知識と知恵のアンバランスが生じ、知識だけを蓄え感性が鈍い人間が増えています。ですから仮に受験対策を頑張って良い企業に就職できたとしても、挫折に脆く、短絡的に事件や事故を起こす人間がいる。なぜなら現象に振り回され、じっくりと本質を見極める力が弱いからです。言われたことはクリアできるが応用問題は解けない。これは対人関係においても同様です。 T1park記者 指導する上で大切にされていることはなんですか?
江本 自らが信念と情熱を失わず、愛情を持ち、包み込む姿勢を確信し、生徒に向き合うことです。これを維持するために向上心と歩みを絶やさないよう心がけています。そうすることで本来各々が持っている、愛する心や美の心、和の心、礼の心を引き出すのです。
私はどんなに人数が多かろうと隣を見ずともきちんとそろえることができると常々言っているのですが、それくらい人の直感力、集中力を養えば何事もやれるものです。重要なのはメンバー全員が整うことであり、個人の技術を磨くだけでは不十分なのです。発表会などでよく「先生のところは全然違いますね」とお褒めの言葉をいただくのですが、それは技術以外の部分を吹き込んでいるから、そして皆の力を信じているからなのです。いつも私は言っています、必ずできると。こちら(指導者)が疑っていては何もできるはずがないんですよ。こちらはビクともしないくらい信じる。当然自分に自信のない生徒も沢山います。しかし、少しも疑わず確固たる信じる気持ちをもって接するのです。子供は大人の世界と違い、邪気もしがらみもありませんので真っ直ぐなものは真っ直ぐに伝わります。これを大事なこととして伝えたい。そしてこれを貫くこと。大人になるにつれて理想を失ってしまってはいけない、絶対になくしてはならないものです。 T1park記者 部活動を通して生徒に伝えたいことは。 江本 日本の誇れる精神文化です。日本の伝統である民族衣装きもの(和装)に込められた真の美を学び、心を高め、きもののように人の心を包み、帯結び(結びは愛)のように様々な出会いの縁を成長に生かして欲しいと願っています。又、自然との調和より生み出された和装・教育を通して、「生きているのではなく生かされている、守られている、導かれている」という畏敬の念を養い、「心の眼」が開かれた時、真の繁栄(幸福)に至ると伝えたいです。 T1park記者 ありがとうございました。 |