T1park記者
甘やかすばかりではいけないと。 高木顧問 ぬるま湯ではだめなんです。私達の時代からすると今の子達の気質、親御さんも含めて大分変わってきました。一言で言うと甘い。小さい時からなんでも「してもらって」育っているので技術は高いのですが強さがない印象です。 T1park記者 それを踏まえて規律を与え、自立を促している。 高木顧問 そうです。ただ昔は厳しくするだけでよかったのですが、近年は厳しさだけでは心が保ちません。ですからメリハリが必要。大事なのは心の問題で、昔と変わらず譲れないものはありますがその出し方や選手との接し方というのは常に変化しています。 来年度から女子部員も男子と同様に自宅から通える者は自宅から通学でも構わないと決めました。もちろん寮に入ってもいいのですが自宅通学でも構わないとするのは大きな変化です。 |
T1park記者
3年間の卓球部生活で成長する子の特徴はなんですか。 高木顧問 昔も今も変わらないのは「陰日向なくコツコツと努力する」子は伸びるということ。そして子犬のようにキャンキャン吠える子よりも、たとえ噛まれてもグっとこらえる力を持っている子が強くなりますね。試合に勝つために誘惑をこらえ、いかにやるべきことをやるか、これに尽きると思います。私達は勝つための練習をさせているのでそれをどれだけ耐えられるかも大事です。 T1park記者 指導する上で大事にしていることはなんですか。 高木顧問 動作の部分では「早く、速く、正確に」ということ。もうひとつは「気配りと目配り」、これは気付きの部分でこれら両方を大事にしています。気配りと目配りとは常に心にアンテナを張り、例えば人が来られたらきちんと挨拶をし、サッとスリッパを出すなどのことを習慣づけること。他にも駅の階段で赤ちゃんとベビーカーを抱えているお母さんを見かけたらどうするか。そうした手助けを恥ずかしがらずにできるようになることも大事です。 |
T1park記者
気付き、それを行動に移すことが大事ということですね。 高木顧問 これは卓球をする上でも関連してきます。対戦相手のスキを見抜き、心理状態を探る。自分のことだけ考えている人間は「自分はこんなに頑張っているのに」で終わってしまう。一生懸命頑張るのは皆同じです。 仲間を気遣うことも大事。相手の立場になって考えるというのは学校でもよく教えられることですが、相手の表情をみて「元気がないな、なにかあったのかな」などチームメイトのことを思うこともひとつの勉強であり、経験だと思います。 なんのために厳しい環境で卓球をするのか。たまたま縁があって卓球に出会い、そして慶誠高校に来てくれた子供たちです。卓球も競技ですから順位がついてしまうのは仕方がないこと。ただ卒業する時にはなにか卓球以外の部分でもその子のためになるものを身につけさせてあげたいと思っています。たとえば「みんなの約束事を守る」ということや「それぞれの目標を設定し達成のために毎日辛抱しながらコツコツ頑張る」こと。卓球の競技人生よりもそれ以外の人生の方がもっともっと長い。自分の人生を生き抜く人間力を身につけてほしいと思います。 卓球で上位に行けない子にどうやって自信をつけるかというのが一番難しい。勉強などなにか特技があればいいのですが、これはその子の生き方の指針になるので自信を持って過ごさせるにはどうすればよいか本当に悩みます。容姿でもいいと思います。顔立ちは親からもらったもので変えようがありませんが、顔つきは個人の問題です。美人でなくてもニコニコ笑顔だと感じがいいですよね。子供たちに私見てそう思うでしょと言うと大声で「ハイ!」と言われ複雑でしたけど。笑い。顔つきには心がでます。感じがいい人間だなと思われればチャンスをもらうチャンスが生まれます。 |
T1park記者
部活動を通して生徒に伝えたい人間力は。 高木顧問 人間力を一言で表すのは難しいですが、たとえば挨拶はコミュニケーション能力のひとつであるし、集団の中で約束事を守るのはとても大事です。子供たちには常々「小さいことができなければ大きなことは決して成し得ない」ということを言っています。勝ちたければ自分の今の課題をひとつひとつクリアすること。昔の話をしてもしょうがないのですが、私達の時は勝ちたいから毎日走ろうとか筋肉をつけようとか自らプランが出てきていたものですが、今は具体的な指導をしなければいけなくなっています。上から物を言うようで恐縮なのですが指導して響く子であってほしいなと思います。 |
T1park記者
響くとは。 高木顧問 響く子は言葉を心で捉えます。極端な話をすれば雑用を頼まれた時に「自分だけ行かないといけない」ではなく「自分が指名された」と前向きに捉えることができる。物事をポジティブにとらえ、やることを無駄にしない子は社会に出てからも絶対大丈夫ですね。 それからどの競技でも一緒だと思いますが、実力があっても態度が悪かったりするとBチームにあえて落とすことがあります。そこでふてくされる子はもうトップチームに上がってこれません。それはふてくされた事自体で監督が起用しないのではなく、自分自身でチャンスを逃しているからです。若い子にとっては失敗したことも怒られたこともすべて自分がステップアップするためのチャンスなんです。 卓球には順位がつく、つまり誰もが挫折を味わっています。挫折を味わうからこそスポーツをした後は強くなれるもの。挫折は味わって当たり前。そこからいかに立ち上がるか。私達も言葉かけやサポートは注意深くやっていますが、そこに気づくのが早い子ほど上達も早いですね。 チャンスは必ず平等に巡ってきます。しかし、その時に油断があるとそのイスに座ることができない。そうするとまた順番が回ってくるのを待たないといけません。だから準備が大事。もちろんイスには高い低いがありますが、必ず全員が乗れるイスが回ってくるんです。しかもそれは一方通行ではなく、もし逃したとしても反省して努力を重ねればまたイスは回ってくる。卓球で乗れなくてもその後の人生の中で乗れるかもしれない。それに気づくかどうかです。 |
T1park記者
若者への応援メッセージをお願いします。 高木顧問 私は、一生懸命考えて出した答えに×はないと考えています。周りの人から回り道だと言われたとしてもその時にしっかり考えて出した答えはすべて○だと思う。今の子達は、ひょっとしたら親御さんが言っているのかもしれませんが、多分こうなるだろうと結果をすぐ言うんですよね。でもそれは親御さんの経験であって若い子供たちもそうとは限りません。ですからああだこうだと皮算用をするのではなくまずは飛び込んでほしい。 それから人間は常に強くありつづけるのは難しいので時には弱い自分も許してあげること。弱い自分も認めてあげる。それも自分だから。どうしても辛い時は今日休んで明日からまた思いっきり頑張ればいいと思います。 T1park記者 ありがとうございました。 |