T1 park 記者
熊本保健科学大学の近況は。 小野学長 短大から4年制大学になって12年目になります。学生数は800人から1600人に倍増しました。ただ、人数が倍増になっても保健医療分野に特化し、今後も浮気はしませんよ(笑)。 国家試験の合格者においては看護学科で100%を達成しました。就職率は、すべての学科で100%です。大学のブランド力とは、特に卒業生が社会で活躍し、評価されることだと思っています。本学では卒業生が1年経って戻って来た際に「久しぶり元気会」をやっています。そこで卒業生と話をするのですが、わずか1年で、皆さんたくましくなって帰ってきます。成長した姿を見ることができ、嬉しく思います。小さい本学だから、卒業生まで目配りできる良さがあると思っています。 |
T1 park 記者
熊本保健科学大学で身に付けて欲しい人間力は。 小野学長 他人の生き方を理解し、その上で人に優しくできることです。これが人間力だと思っています。私はいつも「少なく読み、多く考えよ」と口にしています。これは決して本を読むなと言っているわけではありません。読みすぎている人に対してのメッセージなんですよ。読みすぎは引きずられ易くなります。一番大切なことは、自分の頭で考えることです。社会に出たら、狭い専門力でやっていきますから、一歩引いた広い視野で物事を見る目を持つ必要があります。そのためにも教養を身に付けて欲しいということです。 本学の基本理念には、「知識」と「技術」そして「思慮」と「仁愛」を掲げています。前者の「知識」「技術」は本学でしっかり勉強すれば身に付けることは大丈夫です。本当に必要なものは後者の「思慮」と「仁愛」の二つの理念です。本学ではボランティアがとても盛んです。そこから人とのコミュニケーションや教養、社会倫理を身に付けてもらいたいと思っています。その上で、保健医療分野の教育と研究を通して、社会に貢献できる医療技術者を養成することを、本学の揺るがないミッションだと位置付けています。医療関係ですから、他人の生命を直接間接的に預かるわけです、知識が身に付いて、人に優しくできる、これが本学で身に付けて欲しい人間力です。 |
T1 park 記者
学長が学生の時に経験したことで、今の自分にとって役立っていることは。 小野学長 卒業の頃にインターン(研修医)制度に対して反対の動きが高まり、国家試験をボイコットする運動が全国に広がりました。当時、インターン制度や国のことについて熱い討議を繰り返していました。白衣を着て市中デモにも参加しました。今思えば、医学部を卒業して医者だけの仕事をするのではなく、世間と関わり、世間を良くしたいと思う感覚と周囲との団結心を養うことができて良かったと思っています。 今の時代、ボイコットはなかなかできないと思います。大学を取り巻く社会環境は昔と違います。人ごとどころではなく、自分のことで精一杯の部分が今はあるかと思います。何も許されない息苦しい現代社会においてもう少し寛容さがあっても良いかもしれませんね。自分でプライドを持って何かを行動に移すのであれば、それが偶然にも世間とずれていても、本来それはそれで良いことなんですけどね。 毎日のルーティンワークが上手くいっているということは、新しいものが生まれないということです。つまり、ルーティンワークでないことを実行できるかどうかなんですよ。そして、それを許せる社会が大切なんですよね。 |
T1 park 記者
若者への応援メッセージを。 小野学長 あまり早く自分の才能とか行先を決めてしまうな、ということです。昔は29歳までは、「手に職持つな、嫁持つな」と言われていました。色んな経験をして、前向きな小さな失敗を数多くしてもらいたいということが言いたいんです。そして自分をもっと高く評価できるように、努力して前に進んでもらいたい。一人だと思っても、一人ではないことを自覚してもらいたい。きっと誰かがあなたを見ています。ゴールのテープをあまり手前に張りすぎないでもらいたいですね。 「道は自ら咫尺(しせき)に在り」という言葉が好きなんですよ。道は探し求めなくても、勉強したい気持ちさえあれば、どこにでもテーマはあります、という意味なんですよ。ここで使われている難しい漢字の「咫(あた)」とは手を開いたときの中指の先から親指の先までの長さの単位のこと。何事にも自らが好奇心を持ち続けてもらいたいですね。 T1 park 記者 ありがとうございました。 |