原 幸雄 (はら ゆきお) 熊本工業高校 吹奏楽部指導者・指揮者 【プロフィール】 1952年(昭和27年)6月13日生まれ。67歳。合志市出身。 熊本工業高校工業化学科卒。中学時代より吹奏楽を始め、ヤマハ吹奏楽団浜松でトロンボーン奏者として活躍する。また当時日本では珍しかったマーチングバンドに魅了され、日本マーチングバンド指導者協会公認指導員ライセンスを取得。『くまもと未来国体』のマーチング演出など、様々な吹奏楽団・マーチングバンドの演出家・指導者として活躍する。 1973年、浜松より帰熊し数年後母校・熊本工業吹奏楽部の指導者に就任。その後、全日本マーチングコンテストに通算19回の出場を果たし、金賞11回・銀賞8回を獲得。その他受賞・好成績多数。同時に日本マーチングバンド協会公認指導員、本部検定員、九州マーチングバンド協会副理事長、平成音楽大学講師などを務める。 本気で打ち込めるものを 見つけよう |
九州のレベルが上がっている 私たちも負けじと頑張りたい ―熊本工業高校(以下、熊工)吹奏楽部の近況を教えて下さい。 原 今年はまず5月31日午前、県総体の開会式を盛り上げるため、マーチングバンドとして参加しました。当部活は創部63年を迎えますが、そもそも昔は、マーチングをやれる高校が県内にほとんど無かったんですね。その関係で数十年前から、熊工だけの出演が恒例となっています。これには入部間もない1年生を含め、全部員で参加しました。ちなみに現在、3年35、2年31、1年19の計85名で活動しています。 なお前日の午後は、県総文祭(熊本県高等学校総合文化祭)に参加。忙しい2日間となりましたが、どちらも「発表」だけの場で、競い合うことはありませんでした。そういう意味では、今月末(7月24日~)にある県吹奏楽コンクールが、今年初の「競い合う舞台」と言えるでしょうか。 |
原
工業高校ですから、元々は男子ばかりの部でした。今は男女比が逆転しましたが、男性的な「力強さ」は今なお、当部のチームカラーとして受け継がれていると思います。私は「パワフル&スピーディー」と言うんですが、キビキビした質実剛健の演奏とパフォーマンス、これはまさに部の特長かもしれませんね。マーチングの時の服装にしても、他校に比べシンプルな方だと思います。
そのため、いわゆる「音楽ファン、マニア」だけでない、幅広い層に楽しんでもらえる点が魅力です。たとえば子供が観ても、なんだかワクワクするとか、いろんな喜びを感じ取ることができる。そして、そんな観衆の拍手・歓声を感じることで私たちの気持ちも盛り上がっていき、観ている人と私たちが一体になって楽しさを共有できる。そんなところもマーチングの魅力だと思いますね。―部の特長を教えて下さい。
ですが社会の流れにより、特に公立のこの高校では、長い練習時間の確保が難しくなっています。ですから今後は、限られた時間でいかに効率よく、効果的な練習プランを考え実行していくか…そこが大事になると思いますね。アメリカの指導者はまさにそうで、教えられる側よりもはるかに頭を悩ませる立場。そのように日本の指導者も、だんだんアメリカのようになっていく気がします。私は今でも怒る時は怒りますが、昔のように感情任せに怒鳴って教える時代ではない、それは実感しています。
ただそれはそれとして、本音を伝えることは大事だと思いますよ。生徒たちにも言いますね、摩擦が起きないように無難にやり過ごすのは止めなさいと。時にぶつかり合っても、思っていることはお互いちゃんと伝え合わないと。そうでなくては、チームとしての成長なんてありえないと思います。
先輩へのリスペクト、 後輩への思いやりの大切さ ―学生時代の、今に活きる「学び」を教えて下さい。 原 実は私は、ここ熊工吹奏楽部のOBなのですが…部のみんなとの人間関係、またその中で培ったコミュニケーションスキルは、まさに今に活きていると思います。 先輩へのリスペクト、後輩への思いやり。そういったものはいち社会人としても、それから今や1,000人を超えるOB会のメンバーとしても役立っています。おかげで多くのOB・OGの方から部のご支援を頂いておりますし、個人的なお付き合いも続けさせてもらっています。ちなみにOB会には独自の楽団がありまして、毎年5月に熊本県立劇場で披露する演奏の時には毎回、私が指揮を務めさせてもらっているんですよ。 |
原
月並みですが…どんなことでも良いから何か1つ、本気で「打ち込めるもの」を見つけて欲しいと思います。
例えばひと口に「音楽」と言っても、その中には数学的要素、科学的要素…いろんな要素があり、様々な世界につながっています。若者は多様な世界で様々に飛躍する可能性を秘めている、そんな彼らだからこそ、今のうちに何かに一生懸命打ち込んで欲しい。そして、飛躍へのきっかけを掴んで欲しい。そう願います。
Writer T.Iwanaga